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Wednesday

TOKYO: Environmental Radiation Measurement Result

Tokyo リアルタイム放射線測定値
Updated every hour

Radiation Monitoring Data from Fukushima No.1 Power Station

Chief Cabinet Secretary, Yukio Edano
in Fukushima
Monitoring Post Map (Fukushima No.1 Power Station)

Radiation Monitoring Data from Fukushima No.1 Power Station

Thursday

福島第1原発沖合の海底から通常濃度1000倍の高濃度放射性物質を検出

東京電力は3日、福島第1原子力発電所から15~20キロ離れた沖合の海底から採取した土で、1キログラムあたり1200~1400ベクレルの放射性セシウムなどを検出したと発表した。通常の濃度の1千倍にあたる。海底の土から高濃度の放射性物質が検出されたのは初めて。魚介類などに影響を与える恐れもある。
土を採取したのは4月29日で、福島第1原発から北側に15キロ、南側に20キロそれぞれ離れた2カ所の海底。いずれも海岸から3キロ沖合で、深さ20~30メートルから採取した。原発から北側では同1400ベクレル、南側では同1200ベクレルの放射性物質が検出された。通常は海底から放射性物質は検出されず、見つかったとしても2~3ベクレル程度という。
経済産業省原子力安全・保安院によると、海底の土については法令上の濃度限度はない。今回見つかった放射性セシウムは半減期が2~30年と長く、今後定期的な計測を続けるという。




平成23年3月21日、周辺環境のモニタリングの一環として、東北地方太平洋沖地
震で被災した福島第一原子力発電所の放水口付近(南側)において、海水に含まれ
る放射性物質のサンプリング調査を行った結果、放射性物質が検出されたことから、
原子力安全・保安院ならびに福島県へ連絡いたしました。
3月22日より、福島第一原子力発電所沿岸部におけるサンプリングについては、
4箇所(うち2箇所については、3月26日より、1日各2回実施)で実施しており
ます。

また、4月17日より、福島第一原子力発電所の沖合3km地点4箇所(4月26日よ
り2箇所追加、4月30日より3箇所追加、計9箇所)、沖合8km地点2箇所、沖合
15km地点6箇所でサンプリングを実施しており、その評価結果もあわせて連絡して
おります。

なお、本調査結果におけるヨウ素-131、セシウム-134、セシウム-137の3核種に
ついては確定値としてお知らせすることとし、その他の核種については、4月1日
の原子力安全・保安院による厳重注意を受けて策定した再発防止に係る方針に基づ
き、今後、再評価を実施することとしております。
(お知らせ済み)

平成23年5月3日、福島第一原子力発電所で検出された放射性物質の海洋への拡
散を評価するため、サンプリング調査を行い、海水に含まれる放射性物質の核種分
析を行った結果、別紙の通り、放射性物質が検出されたことから、本日、原子力安
全・保安院ならびに福島県へ連絡いたしました。

今後も、同様のサンプリング調査を実施。
 ・海水核種分析結果(PDF 72.9KB)
海水放射能濃度(PDF 10.4KB)
沿岸 海水放射能濃度(Bq/cm3)(PDF 23.4KB)
沖合 海水放射能濃度(Bq/cm3)(PDF 78.0KB)

 

Wednesday

「なぜ大人より乳幼児・子供の方が危険なのか?」(1) - 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(放射線被曝による影響)

参照:「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」平成14年4月原子力安全委員会
原子力施設等防災専門部会
はじめに
平成11年9月30日に株式会社ジェー・シー・オー(JCO)ウラン加工工場において発生した臨界事故(以下「JCO 事故」という。)は、我が国で初めて周辺住民の避難等の防護対策が行われるとともに、3名の作業員が重篤な放射線被ばくを受け、2名が亡くなられる前例のない大事故となった。JCO 事故以降、この事故の対応の反省を踏まえて、原子力災害対策特別措置法が制定されたことを受け、原子力安全委員会は、原子力防災対策の技術的、専門的事項を取りまとめた「原子力施設等の防災対策について」(以下「防災指針」という。)の改訂を平成12年5月に行った。

日本はHIROSHIMAの惨事から何を学んだのか?
その後、緊急被ばく医療については、平成13年6月に、原子力発電所等周辺防災対策専門部会において、緊急被ばく医療の基本的な考え方やその体制について、「緊急被ばく医療のあり方について」として取りまとめ、その要点を防災指針に反映した。

しかしながら、事故発生時は、原子力発電所等からの放射性ヨウ素の放出に対する安定ヨウ素剤の予防的な服用については、吸入による放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する効果があると認められているが、安定ヨウ素剤の服用に係る防護対策をより実効性のあるものとするためには、さらに検討に時間を要すると考えられたことから、今後の検討課題とした。平成13年6月には、緊急被ばく医療に対する検討の重要性等をも踏まえ、原子力発電所に限らず他の原子力施設等における災害対策に関する課題について、より的確かつ総合的に対応するため、従来の原子力発電所等周辺防災対策専門部会を再編して、原子力施設等防災専門部会を設置し、被ばく医療についても引き続き検討を行うこととした。

安定ヨウ素剤
今回、原子力施設等防災専門部会被ばく医療分科会ヨウ素剤検討会では、原爆被災者に対する長期追跡調査から得られた科学的知見、チェルノブイリ原子力発電所事故等の疫学的調査結果及びヨウ素と人に係る生理学的、病理学的な知見を踏まえ、

・安定ヨウ素剤の効果及び副作用
・被ばく時年齢と甲状腺がんとの関係
・安定ヨウ素剤に係る防護対策を開始するための線量
・安定ヨウ素剤の服用対象及び服用方法

等について医学的見地から検討し、その考え方を示すとともに、甲状腺の内部被ばくに対する安定ヨウ素剤の予防的な服用を、屋内退避、避難等の防護対策の一つとして位置付け、より実効性のある安定ヨウ素剤に係る防護対策を提案し、本報告にまとめた。本報告の要点については、防災指針に反映することとしている。国、地方公共団体、原子力事業者、医療関係者等が、本報告の内容を十分に参考にして、安定ヨウ素剤に係る防護対策を構築することを期待する。なお、今後の調査研究の進展等を考慮し、新たな知見等を積極的に取り入れ、必要に応じて本報告を見直すものとする。


1.原子力災害時における放射性物質の放出と安定ヨウ素剤の意義について

(1) 放射性物質の放出形態

原子炉施設等において、原子力災害が発生した場合、放射性物質として、気体状のクリプトン、キセノン等の希ガスとともに、揮発性の放射性ヨウ素が周辺環境に異常に放出されるが、希ガスは外部被ばく、放射性ヨウ素は内部被ばくにより、人体に影響を与えることが想定される。一方、多重の物理的防護壁により施設からの直接の放射線はほとんど遮へいされ、固体状及び液体状の放射性物質が広範囲に漏えいする可能性は低い。
また、核燃料施設において、臨界事故が発生した場合、核分裂反応によって生じた核分裂生成物である希ガスとともに放射性ヨウ素が放出されることが想定されるが、放出される量は原子炉施設に比べて極めて少ない。

(2) 安定ヨウ素剤の意義
人が放射性ヨウ素を吸入し、身体に取り込むと、放射性ヨウ素は甲状腺に選択的に集積するため、放射線の内部被ばくによる甲状腺がん等を発生させる可能性がある。この内部被ばくに対しては、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を防ぐことができるため、甲状腺への放射線被ばくを低減する効果があることが報告されている。ただし、安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被ばくや希ガス等による外部被ばくに対して、放射線影響を防護する効果は全くないことに留意する必要がある。

また、放出された放射性ヨウ素の吸入を抑制するためには、屋内へ退避し窓等を閉め気密性に配慮すること、放射性ヨウ素の影響の少ない地域への避難等の防護対策を適切に講じることが最も重要である。

放出された放射性ヨウ素に汚染された飲食物の摂取による人体への影響については、飲食物摂取制限が講じられるため、それらの飲食物を摂取することにより身体に取り込まれる放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくについては、小さいものと考えられる。


2.放射線被ばくによる甲状腺への影響

甲状腺への放射線の影響は、外部被ばくによる場合と甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素の内部被ばくによる場合がある。安定ヨウ素剤の予防服用は、放射性ヨウ素の内部被ばくに対してのみ有効である。

放射線の甲状腺への外部被ばくは、放射性ヨウ素の甲状腺への内部被ばくに比べて、放射線の影響が厳しくなることを踏まえ、ここでは、甲状腺への放射線の外部被ばく及び内部被ばくの知見を考え合わせることとする。

2-1 甲状腺がん

(1) 広島、長崎の原爆被災者の長期にわたる疫学調査(1)によると、甲状腺外部被ばく後、長期間にわたり甲状腺がんの発生確率の増加が認められている。すなわち、被ばく者の生涯にわたる甲状腺がんの発生確率(生涯リスク)については、

・甲状腺がんの発生確率は、被ばく時の年齢が20歳までは、線量に依存して有意な増加が認められる(2)
・被ばく時年齢が、40歳以上では、甲状腺がんの生涯リスクは消失し放射線による影響とは考えられなくなる(2)

という結果が得られており、被ばく時の年齢により甲状腺がんの発生確率が異なることが判明している。


(注)本報告では、放射線の単位である「Gy」と「Sv」については、概念の混乱を避けるため、準拠した文献の記載どおりとした。また、β 線やγ 線の放射線荷重係数を1として、1Gy=1Sv とする。

(2) 広島、長崎の原爆被災者のデータに加え、放射線治療後の患者のデータをまとめ甲状腺外部被ばくによる甲状腺がんの発生確率を解析した結果(3)では、以下の知見が得られている。

・5歳未満での被ばくに比較して、10~14歳での被ばくでは、その発生確率は5分の1に低下する。また、20歳以上では、1Gy 以下の甲状腺被ばく後の甲状腺がんの発生確率は極めて低い・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、100mGy の甲状腺被ばくでもその増加が観察される
・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、被ばく後5~9年で増加し、15~19年で最大となり、40年後でも発生確率は残存する

(3) マーシャル諸島における核爆発実験で生じた放射性降下物による甲状腺被ばくの影響調査(4)では、小児の甲状腺がんの発生確率の増加が認められている。なお、甲状腺に集積した放射性物質としてヨウ素以外にテルルの存在が報告されている。

(4) チェルノブイリ事故後の国際的調査に関して、被調査集団の事故時の年齢が15歳未満で、その60%は5歳未満の小児を対象とした調査では、甲状腺内部被ばくによる甲状腺がんの発生確率は、有意な増加が認められている(5,6,7,8)。

また、チェルノブイリ原発事故当時の乳幼児に関する調査では、事故直後の短半減期の放射性降下物による甲状腺内部被ばくによる甲状腺がんの増加が示唆されている(8,9,10)。

さらに、ロシアで甲状腺内部被ばく者の甲状腺がんの発生確率に関する調査では、被ばく時の年齢が18歳未満の者では成人の3倍である(11)。なお、チェルノブイリ事故では、ヨウ素-131と甲状腺発がんリスクとの関連が報告されてきたが、最近の別の研究では、甲状腺がんの発生にヨウ素-131以外の放射性ヨウ素が寄与している可能性が示唆されている(12,13)。

上記の(1)~(4)の調査より、以下の知見が得られている。・放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの発生確率は、特に乳幼児について高くなる

・放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの大部分は、甲状腺濾胞細胞に由来する乳頭腺癌であり、一般的には、悪性度が高くないため、適切な治療が行われれば、通常の余命を全うできるなお、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんに関する上記のいずれの調査も、死亡に基づくものではなく罹患率に基づいて得られた解析である。

2-2 甲状腺機能低下症

一定量以上の放射線に被ばくした後、数ヶ月の期間をおいて、甲状腺の細胞死の結果として甲状腺ホルモンの分泌が減少することにより、甲状腺機能低下症が発症する場合がある。

甲状腺機能低下症の発症は、放射線の確定的影響であって、しきい線量が存在する。そのしきい線量を超えた場合には、被ばく線量が増加するに従って発生率が増加し、重篤度も高くなる。

現在、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)並びに世界保健機関(以下「WHO」という。)では、内部被ばくによる甲状腺機能低下症が発症すると予測されるしきい線量として甲状腺等価線量で、5Gy が提案されている(14,15)。このしきい線量については、下方に、見直しが行われているところである(15,16)。

2-3 その他の甲状腺疾患

マーシャル諸島における核爆発実験で生じた放射性降下物による甲状腺被ばくの影響調査(4,17)及びチェルノブイリ原子力発電所事故調査(9)では、小児の甲状腺良性結節の発症が報告されている。一方、長崎の原爆被災者の最近の調査では、甲状腺被ばくの影響として自己免疫性と考えられる甲状腺機能低下症の発症も示されている(18)。

これら甲状腺疾患の発症に係る放射線被ばくとの関連については、さらに検討が積み重ねられているところである。

「なぜ大人より乳幼児・子供の方が危険なのか?」(4) - 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(放射性ヨウ素による防護対策についてのまとめ)

参照:「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」平成14年4月原子力安全委員会
原子力施設等防災専門部会

まとめ

広島、長崎の原爆、マーシャル諸島における核爆発実験、チェルノブイリ原子力発電所事故等の調査結果及びヨウ素と人に係る生理学的、病理学的な知見を踏まえ、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくに対する防護対策について、以下の基本的な考え方をまとめた。

(1) 原子力災害時に放出された放射性ヨウ素の吸入による甲状腺への影響が著しいと予測された場合、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を効果的に抑制し、甲状腺への障害を低減できることが報告されている。このため、災害対策本部の判断により、屋内退避や避難の防護対策とともに安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。

(2) 放射線被ばくによる甲状腺への影響は、甲状腺がんと甲状腺機能低下症がある。被ばく後の甲状腺がんの発生確率は、乳幼児の被ばく者で増加する場合があるが、40歳以上では増加しないため、年齢に応じて、安定ヨウ素剤の服用対象を定める必要がある。

特に、新生児、乳幼児等には、安定ヨウ素剤服用の措置について最優先とすべきである。これに対し、甲状腺機能低下症はしきい線量以上の被ばくで生じるため、甲状腺機能低下症に対する安定ヨウ素剤予防服用については、しきい線量の概念を導入することとする。

(3) 安定ヨウ素剤の服用による副作用は稀であるが、副作用を可能な限り低減させるため、年齢に応じた服用量を定めるとともに、服用回数は原則1回とし、連用はできる限り避ける。

(4) 安定ヨウ素剤の服用により、重篤な副作用のおそれがある者には、安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮し避難を優先させる。

(5) 安定ヨウ素剤の服用については、その効果を最大とするため迅速に対応する必要がある。このため、安定ヨウ素剤予防服用に係る指標を定め、屋内退避や避難等他の防護対策とともに、より実効性のある防護対策を定めておく必要がある。

(6) 防災業務関係者は、その防災業務の内容、甲状腺がんと甲状腺機能低下症の発生リスクを考え合わせ、安定ヨウ素剤を予防的に服用することを考慮する。

これらの考え方に基づいた「安定ヨウ素剤予防服用に当たって」を次頁に示す。


安定ヨウ素剤予防服用に当たって

(1) 安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標

全ての対象者に対し、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100mSv とする。

(2) 服用対象者
40歳未満を対象とする。
ただし、以下の者には安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮する。
・ヨウ素過敏症の既往歴のある者
・造影剤過敏症の既往歴のある者
・低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者
・ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者

(3) 服用回数
1回を原則とする。なお、2回目の服用を考慮しなければならない状況では、避難を優先させること。

(4) 服用量及び服用方法

以下の表に示す。
対象者 ヨウ素量 ヨウ化カリウム量
新生児(注1) 12.5 mg 16.3 mg
生後1ヶ月以上3歳未満(注1) 25 mg 32.5 mg
3歳以上13歳未満(注2) 38 mg 50 mg
13歳以上40歳未満(注3) 76 mg 100 mg

(注1)新生児、生後1ヶ月以上3歳未満の対象者の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(滅菌蒸留水、精製水又は注射用水)に溶解し、単シロップを適当量添加したものを用いることが現時点では、適当である。

(注2)3歳以上13歳未満の対象者の服用に当たっては、3歳以上7歳未満の対象者の服用は、医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(滅菌蒸留水、精製水又は注射用水)に溶解し、単シロップを適当量添加したものを用いることが現時点では、適当である。また、7歳以上13歳未満の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬1丸(ヨウ素量38mg、ヨウ化カリウム量50mg)を用いることが適当である。
(注3)13歳以上40歳未満の対象者の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬2丸(ヨウ素量76mg、ヨウ化カリウム量100mg)を用いることが適当である。

(注4)なお、医薬品ヨウ化カリウムの製剤の実際の服用に当たっては、就学年齢を考慮すると、7歳以上13歳未満の対象者は、概ね小学生に、13歳以上の対象者は、中学生以上に該当することから、緊急時における迅速な対応のために、小学1年~6年生までの児童に対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬1丸、中学1年以上に対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬2丸を採用することが実際的である。また、
7歳以上であっても丸薬を服用できない者がいることに配慮する必要がある。

(注5)40歳以上については、放射性ヨウ素による被ばくによる甲状腺がん等の発生確率
が増加しないため、安定ヨウ素剤を服用する必要はない。

(注6)医薬品ヨウ化カリウム、滅菌蒸留水、精製水、注射用水、単シロップ等は、原子力
災害時に備え、あらかじめ準備し、的確に管理するとともに、それらを使用できる
期限について注意する。


おわりに

本報告書では、原子力災害時における、放射性ヨウ素による甲状腺への内部被ばくを予防するための安定ヨウ素剤服用の必要性と有用性について、医学的見地から検討した。

過去の放射線被ばく事例や科学的文献を詳細に検討し、国際機関の指針等も参考にした。安定ヨウ素剤の予防的服用の妥当性については、服用による副作用や服用しないことによる甲状腺がんの発症などを考慮したリスク・ベネフィットバランスよりその基本的な考え方を示した。さらに、安定ヨウ素剤服用の措置については、新生児や乳幼児を最優先とすべきであるとの提言を取りまとめた。

本報告書では、安定ヨウ素剤予防服用に係る考え方についての基本的な枠組みを示したが、その内容を具体的に実効性のあるものとするためには、

① 自治体における各々の実情を踏まえた、安定ヨウ素剤予防服用に係る実効性の検討
② 安定ヨウ素剤予防服用ついての周辺住民等への情報提供
③ 住民及び防災業務関係者にも理解しやすい具体的なマニュアルの作成
④ 安定ヨウ素剤予防服用を、確実かつ安全に実施するための医療関係者用のマニュアルの作成
⑤ 防災訓練における安定ヨウ素剤予防服用を想定した訓練の実施、及びその実効性の向上
⑥ 新生児・乳幼児が服用可能である新たな剤型等のあり方の検討等が、今後検討されることが必要である。

安定ヨウ素剤予防服用の審議より導き出された考え方は、原子力災害時のセイフティーネット構築の一助となるであろう。実効性ある安定ヨウ素剤予防服用に係わる体制を構築するためには、関係者の継続した熱意と努力が必要である。

「なぜ大人より乳幼児・子供の方が危険なのか?」(3) - 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(安定ヨウ素剤の服用方法)

5.安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策

原子力災害時に放射性ヨウ素が放出され、その放射性ヨウ素の吸入により甲状腺への影響が著しいと予測される場合、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を効果的に抑制するため、安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。

その際、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策は、その効果を最大とするために迅速に対応する必要がある。このため、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための線量のめやすを指標として定め、屋内退避や避難等の他の防護対策とともに、より実効性のあるものとしておく必要がある。


5-1 国際機関における安定ヨウ素剤の服用に係る介入レベル等

(1) IAEA は、実効性の理由から、安定ヨウ素剤予防服用に関して、介入レベルとして回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量100 mGy を、対象者の性別・年齢に関係なく推奨している(14)。この「回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量」は、防護措置を行わなかった場合に予測される被ばく線量から、防護措置を行った場合に予測される被ばく線量を差し引くことにより表される。例えば、防護措置を行わなかった場合に予測される被ばく線量が100 mGy とした場合、防護措置として安定ヨウ素剤を放射性ヨウ素の体内摂取前又は直後に服用すると、甲状腺への集積を90%以上抑制できるので、甲状腺の被ばく線量を90mGy 以上回避することが可能となる。

各国の安定ヨウ素剤服用に係る介入レベル等は、IAEA が推奨している安定ヨウ素剤予防服用の介入レベルである回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量100 mGy を考慮して、性別・年齢に関係なく全ての対象者に対して一律に、各国の実状に合わせて決められている(参考資料Ⅰ)。

(2) WHO によるガイドライン(15)は、チェルノブイリ原子力発電所事故による若年者の健康影響調査の結果を踏まえて、若年者に対する服用決定に関してIAEA の介入レベル100 mGy の10分の1である10 mGy を、19歳以上40歳未満の者については、100 mGy を推奨している(参考資料Ⅱ)。

なお、最近のIAEA/WHO の合同会議では、甲状腺発がんリスクの年齢依存性を考慮して、若年者に対しては、より低い介入レベルで安定ヨウ素剤を服用させることが議論されている(16)。

5-2 我が国における安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策

(1) 原子力災害時において、放出される放射性ヨウ素に対して、迅速に対応するため、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための線量のめやすを「指標」として提案する必要がある。

(2) 安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための「指標」としては、屋内退避及び避難等に関する指標として、我が国の防護対策として既に提案されている小児甲状腺等価線量の予測線量を用いることが妥当である。

この甲状腺等価線量とは、環境中に放出された放射性ヨウ素を、人が吸入することにより、甲状腺に集積する放射性ヨウ素からの被ばく線量のことであり、その呼吸率と放射性ヨウ素の吸入による線量係数(Sv/Bq)の年齢による違いから、この値は小児(1歳児)において、最も大きくなる。このため、防護対策の指標として、小児に対する値を用いることとする。

また、予測線量とは、放射性ヨウ素の放出期間中、屋外に居続け、なんらの措置も講じなければ受けると予測される線量のことである。したがって、この予測線量は、防護対策を講じられた個々の周辺住民等が実際に受けるであろう甲状腺等価線量を、相当程度上回るものであり、また、回避可能な線量より高い線量の被ばくを回避できるものと考えられる。

組織や臓器の等価線量については、β線やγ線の放射線荷重係数を1として1 Gy=1 Sv とする。

(3) チェルノブイリ周辺の被ばく者のデータは、線量評価等の妥当性の問題や我が国がヨウ素過剰摂取地域である特徴などから、WHO が推奨する若年者に対するガイドラインを、そのまま現時点で我が国において採用することは、慎重であるべきと考えられる。

(4) 退避や避難の介入レベルに関して、不利益と利益の釣合い(以下「リスク・ベネフィットバランス」という。)を考慮して、IAEA SS-109(14)で用いられた計算の方法で、安定ヨウ素剤の服用における防護上の介入レベルを試算すると、放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばくが、50 mGy 以上の時に、安定ヨウ素剤を服用すると、副作用のリスクを上回り有益となる。この50mGy は、外部被ばくに対する試算結果であり、内部被ばくに比べ厳しいもの(介入レベルとしてより低い線量となる。)である(参考資料Ⅲ)。
等を踏まえ、我が国における安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の「指標」として、性別・年齢に関係なく全ての対象者に対し一律に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100 mSv を提案する。

なお、原子力災害時における放射性ヨウ素の放出に対する甲状腺への放射線影響を低減させるための防護対策としては、屋内退避、避難、安定ヨウ素剤予防服用等があり、実効性を高めるためには、これらの防護対策を別々に考えるのではなく、総合的に考える必要がある。

5-3 安定ヨウ素剤の服用方法

災害対策本部が、安定ヨウ素剤予防服用の措置を講じた場合、誤った服用による副作用を避けること、安定ヨウ素剤を的確に管理すること及び周辺住民等が確実かつ可及的速やかに服用できるようにすることが必要である。このため、実際的には、周辺住民の家庭等に、あらかじめ安定ヨウ素剤を事前に各戸配布するのではなく、周辺住民等が退避し集合した場所等において、安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。この場合、服用、副作用等に備え、医師、保健師、薬剤師等の医療関係者を周辺住民等が退避し集合した場所等に派遣しておくことが望ましい。

服用に当たっては、後述する「5-4 服用対象」において示す内容に沿って実施されることとなるが、若年者、特に新生児、乳幼児や妊婦への対応及び副作用について留意する必要がある。すなわち、放射性ヨウ素の内部被ばくによる若年者の甲状腺がんの発生確率が成人に比べて有意な増加が認められていること及び胎児の被ばくを考慮して、新生児、乳幼児や妊婦の服用を優先させる。

また、「5-4 服用対象」において示すヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者は、安定ヨウ素剤の服用により副作用が発生する恐れがある。これらの疾患の説明を記載したパンフレット等を安定ヨウ素剤の配布時に示し、疾患を有する者が安定ヨウ素剤を服用しないように配慮する必要がある。

なお、普段から緊急時において周辺住民等の行動に関する指示が迅速かつ正確に伝達されるような体制が整備されているが、屋内退避や避難ができない災害弱者等に対する安定ヨウ素剤予防服用についても、十分に配慮しておく必要がある。

5-4 服用対象

(1) 年齢を考慮した服用対象者の制限

18歳未満では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの発生確率は成人に比べて有意な増加が認められていること、40歳以上では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺発がんのリスクがないことから、安定ヨウ素剤の服用は、40歳未満の者を対象とする。特に乳幼児は、甲状腺濾胞細胞の分裂が成人に比べて活発であり、放射線によるDNA 損傷の影響が危惧され、安定ヨウ素剤予防服用の効果もより大きいことを十分に認識する必要がある。

(2) 副作用を考慮した服用対象者の制限

・ヨウ素過敏症の既往歴のある者は、安定ヨウ素剤を服用しない。
・造影剤過敏症には、種々の要因による過敏症が含まれていて、その一部がヨウ素過敏症であると考えられている。しかしながら、造影剤過敏症に含まれるヨウ素過敏症の割合について推測することは可能ではない。

したがって、全ての造影剤過敏症の者が、安定ヨウ素剤の服用により、ヨウ素過敏症症状を発症するとは限らないが、造影剤過敏症の既往歴のある者は、安定ヨウ素剤を服用しない。

・低補体性血管炎を有する者はヨウ素に過敏である場合があるため、その既往歴のある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用しない。また、ジューリング疱疹状皮膚炎を有する者はヨウ素に過敏であると考えられるので、その既往歴のある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用しない。

ただし、これらの疾患は、我が国では、稀であるとされている(35,36)。ヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、ジュ-リング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者の安定ヨウ素剤の服用を防ぐため、安定ヨウ素剤の配布時にも、上述の疾患に関する情報を明確に伝えることが必要である。また、これらの者に対しては、避難を優先させることが必要である。

(3) 服用に当たって注意すべき事項

・甲状腺機能異常症について

甲状腺機能異常症には、甲状腺機能亢進症及び低下症がある。甲状腺機能亢進症の大部分はバセドウ氏病によるものであり、ヨウ素を含む製剤はこの治療薬の一つである。また、甲状腺機能亢進症を有する者は、ヨウ素の甲状腺摂取率が上昇していることから、原子力災害時には、甲状腺機能亢進症を有する者は、安定ヨウ素剤を服用する。甲状腺機能低下症のほとんどは慢性甲状腺炎によるものである。甲状腺機能低下症を有する者は、ヨウ素を含む製剤の服用により、機能低下が悪化するおそれがあるが、この場合は、ヨウ素を長期にわたり摂取した場合である。慢性甲状腺炎を有する者が、ヨウ素を含む製剤の服用により、一過性の甲状腺機能亢進症を呈する無痛性甲状腺炎を発症することがあるが、これは、ヨウ素を長期にわたり摂取した場合である。また、甲状腺機能に異常を認めない慢性甲状腺炎を有する者が、ヨウ素を含む製剤の服用により甲状腺機能低下症を発症することがあるが、この場合も、ヨウ素を長期にわたり摂取した場合である。

したがって、原子力災害時には、甲状腺機能異常症を有する者も、安定ヨウ素剤を服用する。

・結核について

結核を有する者が安定ヨウ素剤を服用すると「ヨウ素は結核組織に集まりやすく、再燃させるおそれがある。」とされているが、再燃を懸念するよりも、安定ヨウ素剤服用により放射性ヨウ素の吸入による甲状腺発がんリスクを軽減させる方が有益と考えられる。
したがって、原子力災害時には、肺結核を有する者も、安定ヨウ素剤を服用する。

・新生児について

安定ヨウ素剤を服用した新生児については、甲状腺機能低下症を発症することがあるので、その早期発見・治療のために、甲状腺機能をモニターする必要がある。

・妊婦について

妊婦については、妊娠第1期では、妊婦自身の甲状腺が胎盤由来の絨毛由来性腺刺激ホルモンにより交叉刺激されている。このため、放射性ヨウ素の集積が高くなることが予測され、安定ヨウ素剤の服用による放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制することが必要である。妊娠第2期、3期では、放射性ヨウ素が胎盤を通過し、胎児が被ばくするのでやはり安定ヨウ素剤の服用が必要となる(16)。安定ヨウ素剤を服用した妊娠後期の妊婦より生まれた新生児については、その甲状腺機能をモニターする必要がある。

・授乳婦等について

授乳婦についても、安定ヨウ素剤を服用する。授乳婦が摂取したヨウ素の約四分の一は、母乳へ移行するといわれているが、授乳児については、母乳からの放射性ヨウ素の移行や安定ヨウ素の摂取を正確に見積もれないため、授乳を中止して人工栄養に替え、安定ヨウ素剤を服用させる。
なお、ヨウ素を含む製剤の副作用情報等の動向にも配慮する。

5-5 服用回数、服用量及び服用方法

(1) 服用回数
安定ヨウ素剤予防服用については、その効果を最大とするため、安定ヨウ素剤の配布後、対象者は直ちに服用するものとする。服用回数は、過剰な安定ヨウ素剤の服用による副作用を考慮し、原則1回とする。2回目の服用は、安定ヨウ素剤の効果が1日は持続することが認められていることより、2日目となるが、2日目に安定ヨウ素剤服用を考慮しなければならない状況では、避難を優先させることが必要である。

(2) 服用量
WHO や多くの諸外国における推奨服用量(参考資料Ⅰ)は、ヨウ素量として新生児12.5 mg、生後1ヶ月以上3歳未満25 mg、3歳以上13歳未満50 mg、13歳以上40歳未満100 mg と定められている。
我が国の対象者に対する服用量については、下記のように定める。

・新生児についてはヨウ素量12.5 mg、生後1ヶ月以上3歳未満についてはヨウ素量25 mg を服用量とする。チェルノブイリ原子力発電所事故直後にポーランドで実施された安定ヨウ素剤服用の際のヨウ化カリウムの量及び諸外国の服用量を参考とし、WHO の推奨服用量(15)、すなわち新生児についてはヨウ素量12.5 mg、生後1ヶ月以上3歳未満については25 mg を服用量とする。
・13歳以上40歳未満についてはヨウ素量76 mg を服用量とする。WHO は、13歳以上40歳未満の対象者に、ヨウ素量100 mg を推奨しているが、
① 成人で、少なくとも30 mg の量のヨウ化カリウムを単回服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を十分に抑制する効果が得られること(34)、
② 現在、自治体において準備されている医薬品ヨウ化カリウムの丸薬は、1丸にヨウ素量38 mg を含み、簡便かつ迅速に服用が可能なこと、を考慮して、13歳以上40歳未満の対象者の服用量についてはヨウ素量76 mg とする。
・3歳以上13歳未満についてはヨウ素量38 mg を服用量とする。WHO は、3歳以上13歳未満の対象者に、ヨウ素量50 mg を推奨しているが、

① 放射性ヨウ素の甲状腺への集積を十分に抑制する効果が得られるヨウ化カリウムの成人服用量(34)より考察すると、3歳以上13歳未満の対象者では、ヨウ素量38 mg の服用で、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を十分に抑制する効果が得られると考えられること、
② 現在、自治体において準備されている医薬品ヨウ化カリウムの丸薬は、1丸にヨウ素量38 mg を含み、簡便かつ迅速に服用が可能なこと、を考慮して、3歳以上13歳未満の対象者の服用量についてはヨウ素量38 mg とする。

・40歳以上については服用する必要はない。

(3) 服用方法

服用に当たっては、原子力災害時に備え、準備されている医薬品ヨウ化カリウムの丸薬は非常に硬く、定められた量に分割することが不可能であり、特に、新生児・乳幼児では丸薬の服用が困難である。小児の服用方法については、就学年齢を考慮し、6歳以下の対象者については、安定ヨウ素剤として医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(滅菌蒸留水、精製水、又は注射用水)に溶解し、さらに、ヨウ化カリウムの水溶液は苦味があるために単シロップを適当量添加し、それぞれの対象に応じた正確な服用量としたものを用いることが現時点では適当である。

また、7歳以上13歳未満は医薬品ヨウ化カリウムの丸薬1丸、13歳以上40歳未満については2丸を服用することとする。なお、医薬品ヨウ化カリウムの製剤の服用に当たっては、就学年齢を考慮すると、7歳以上13歳未満の対象者は、概ね小学生に、13歳以上の対象者は、中学生以上に該当することから、緊急時における迅速な対応のために、小学1年~6年生までの児童に対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬1丸、中学1年以上に対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬2丸を採用することが実際的である。また、7歳以上であっても丸薬を服用できない者がいることに配慮する必要がある。

「なぜ大人より乳幼児・子供の方が危険なのか?」(2) - 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(安定ヨウ素剤による効果と副作用)

参照:「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」平成14年4月原子力安全委員会
原子力施設等防災専門部会
 3.安定ヨウ素剤による効果
米軍用170mg

放射性ヨウ素は、呼吸により吸入され気道に沈着し、気管支及び肺から迅速に体循環に移行し、また、吸入された放射性ヨウ素の一部は、咽頭部にも沈着し、食道を経て消化管から吸収され、体循環に移行する(19,20,21)。
取り込まれた放射性ヨウ素の約10~30%は、24時間以内に甲状腺に選択的に集積し、残りの大部分は主に腎臓より尿中に排泄される(21)(参考資料-図Ⅰ)。

なお、我が国においては、医療現場などでの放射性医薬品であるヨウ素の服用による知見等から、日常の食生活において、コンブ等からヨウ素を摂取する頻度が高いため、放射性ヨウ素の甲状腺への取込みは少なくなることが知られている(22)。

甲状腺に集積した放射性ヨウ素は有機化され、一定期間、甲状腺内に留まる。一般に、成人の甲状腺でのヨウ素の生物学的半減期は約80日で、19歳以下の若年者では成人のそれと比べて短い(23)。

健康な成人が安定ヨウ素剤を服用すると、服用後1ないし2時間以内に、その尿中排泄濃度は最大となる。その後、時間とともに尿中ヨウ素排泄量は漸減し、72時間後には、服用した安定ヨウ素剤のほとんどが体内から排出される(24)。

安定ヨウ素剤予防服用による、放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取込みを低減させる効果は、高濃度の安定ヨウ素との共存により、血中の放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取込みと競合するこ(25,26,27,28,29,30,31,32)や細胞内へのヨウ素の取込み抑制効果(33)により、放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への選択的な集積を減少させる(参考資料-図Ⅱ)。

成人では、安定ヨウ素剤として広く用いられるヨウ化カリウムの製剤は、少なくとも30 mg の服用量で、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の95%を抑制することができる(34)。放射性ヨウ素が吸入あるいは体内摂取される前24時間以内又は直後に、安定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる(25,26,27,28,34)。また、すでに放射性ヨウ素が摂取された後であっても、8時間以内の服用であれば、約40%の抑制効果が期待できる(34)。しかし、24時間以降であればその効果は約7%となることが報告されている(34)。
また、この効果は、安定ヨウ素剤服用後、少なくとも1日は持続することが認められている(25)。

4.ヨウ素を含む製剤の服用による副作用

4-1 ヨウ素に対する過敏症

ヨウ素過敏症は、ヨウ素に対する特異体質を有する者に起こるアレルギー反応である。服用直後から数時間後に発症する急性反応で、発熱、関節痛、浮腫、蕁麻疹様皮疹が生じ、重篤になるとショックに陥ることがある。また、ヨウ素を含む造影剤によるアレルギー反応は、造影剤過敏症として知られている。

さらに、低補体性血管炎(Hypocomplementemic Vasculitis)はヨウ素に過敏である場合があり、ジューリング疱疹状皮膚炎(Dermatitis HerpetiformisDuhring)は、ヨウ素に過敏であると考えられている(35,36)。ヨウ素に対する過敏症を有する者が、ヨウ素を含む製剤を服用すると、アレルギー反応を引き起こす。

4-2 甲状腺機能異常症

(1) 血中甲状腺ホルモンの濃度の上昇による甲状腺機能亢進症や、その低下による甲状腺機能低下症では、ヨウ素を含む製剤を長期連用すると、それぞれの病状が悪化するおそれがある(37,38)。

(2) 慢性甲状腺炎を有する者等で、甲状腺機能異常が認められない者が、ヨウ素を含む製剤を長期連用することにより、甲状腺機能亢進症や低下症という甲状腺機能異常症を生じることがある。

・甲状腺の過形成、多発結節性の腺腫様甲状腺腫を有する者が、ヨウ素を含む製剤を長期連用すると甲状腺機能亢進症を呈することがある。しかし、この病態は、日常的にヨウ素を過剰摂取している者には稀である。
また、慢性甲状腺炎の経過中に一過性に甲状腺機能亢進症を呈する例があるが、これはヨウ素の過剰な摂取の継続によるものとの見解もある。

・甲状腺機能が正常な慢性甲状腺炎に対して、ヨウ素を含む製剤を長期連用すると、甲状腺機能低下症に陥ることがある。

・新生児にヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用させると、甲状腺機能低下症を発症させることがある。

・妊婦にヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用させると、胎盤を通して胎児の甲状腺にヨウ素が移行することにより、胎児の甲状腺機能低下症を発症させることがある。特に新生児及び妊娠後期の胎児における甲状腺機能低下症は一過性であっても、その後、知能の発達に影響を及ぼすことがある (39,40)。

・無機ヨウ素の有機化に先天的に異常がある者は、ヨウ素を長期にわたって摂取すると、甲状腺が肥大することがある(海岸性甲状腺腫)。
一方、健康な者が、ヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用すると、一過性の甲状腺過形成や機能低下を生じることがある(41)。

4-3 その他の副作用

・肺結核を有する者がヨウ素を含む製剤を服用すると、ヨウ素は結核組織に集まりやすく、再燃させるおそれがある

・薬疹(ヨウ素にきび)、耳下腺炎(ヨウ素おたふく)、鼻炎等があるが、いずれも極めて稀である

・嘔吐、下痢等の胃腸症状が認められることがある

・カリウムを含む製剤を用いる時は、腎不全症、先天性筋強直症、高カリウム血症を有する者で血清カリウム濃度の上昇による病状の悪化をきたすことがある

4-4 事例に基づく副作用のリスク評価

IAEA SS-109(14)においては、米国での経験をもとに、一日当りヨウ素量300 mg の服用に対する皮膚掻痒、紅斑などの軽症も含めた副作用の発生確率は10-6~10-7と推定している。この中には、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などの副作用が含まれている。ヨウ素予防服用に伴う死亡リスクは3×10-9であると推定されている。

また、チェルノブイリ事故後、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を低減するため、ヨウ化カリウムを安定ヨウ素剤として服用したポーランドにおいて得られた経験に基づけば、成人に重篤な副作用が発生する確率は4×10-7、軽度または中程度の副作用が発生する確率は6×10-4である。安定ヨウ素剤を服用した若年者については、重篤な副作用は報告されていない(42)。同時に、嘔吐・下痢等の胃腸症状等が観察されたが、服用による副作用なのか、または、不安とパニック等の影響なのか、その原因については、明らかにされていない(42)。



4-5 原子力災害時における安定ヨウ素剤服用による副作用についての考え方

我が国では、従来より、甲状腺機能亢進症治療の手術前に、ヨウ素を含む製剤が使用されてきたが、生命に危険を及ぼす重篤な副作用の報告は殆どない。また、チェルノブイリ事故時に安定ヨウ素剤の服用を実施したポーランドでは、成人での生命に危険を及ぼす重篤な副作用は極めて低頻度であり、若年者での重篤な副作用は報告されていない(14,42)。同時に、服用後、頭痛、胃痛、下痢、嘔吐、息切れ、皮膚掻痒などが報告されているが、これらの症状の原因は、安定ヨウ素剤の副作用によるものかは不明である。安定ヨウ素剤の服用に当たっては、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する効果を最大に導き出すとともに、生命に危険を及ぼす重篤な副作用は稀にしか発生しないと推測されているものの、副作用を可能な限り低減する努力が必要である。

このため、
・安定ヨウ素剤の服用に係る決定を行う場合には、服用による利益と不利益を十分に考慮すること
・安定ヨウ素剤の大量服用又は長期連用では副作用の発生のおそれがあることに配慮すること
・安定ヨウ素剤の服用により、生命に危険を及ぼす重篤な副作用のおそれがある者に対しては、安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮すること
・新生児並びに妊娠後期の胎児については将来的に知能の発達に悪影響を及ぼす可能性があるので、安定ヨウ素剤の大量服用又は長期連用を避けるよう十分に注意すること等が必要である。

また、安定ヨウ素剤の服用に当たっては、副作用の発生頻度を低減させる方法の一つとして、周辺住民等を対象に副作用についての情報を普段から提供しておくことも重要である。

Monday

Impact on marine environment of the radioactive release resulting from Rokkasho Reprocessing Plant into the Pacific Ocean

Reference:水口憲哉「放射能を海に棄てないでください」
青森県六ヶ所村再処理工場の稼働が遅れているわけ

東京水産大学(現東京海洋大学)で30数年、全国の漁業における環境問題、特に原子力発電所と漁場との関係についてずっと研究してまいりました。今日は青森県六ヶ所村で稼働予定の「再処理工場」の抱える危険性についてお話ししたいと思います。




再処理工場の危険性について、正しい事実を知り、それが自分たちにとってどういう意味を持つのかということを肌で感じることが、いま一番大切なことです。

再処理工場というのは非常に分かりにくく難しい言葉です。リサイクルできて良いみたいに思えますが、とんでもありません。

いま日本には54基の原子力発電所があります。原発が運転されると、使用済み燃料という、ウラン燃料の燃えカスが出ます。これは非常に危険なものなので陸上を運搬できず海上を船で運搬します。それが今はみんな青森県の六ヶ所村にある日本原燃株式会社の再処理工場に運びこまれています。

再処理工場では、ウラン燃料とプルトニウムを作ります。プルトニウムというのは、核兵器の原料です。そのプルトニウムを日本では、無理やりウラン燃料と一緒に混ぜて「MOX燃料」という燃料にして、原子力発電所を動かそうとしています。これがプルサーマル計画です。ただし、問題が多く日本では実現していません。

六ヶ所村の再処理工場は2006年の3月31日に試運転が始まって、今年の夏から本格稼動かといわれていましたが11月に延び、さらに来春に伸びています。もともと当初の計画では7年前に本格運転が始まっているはずなのですが、様々な問題や事故が次々と起きて、遅れているのが現実です。


アメリカ、ドイツでは危険すぎて建設していない再処理工場

再処理工場は何が問題なのでしょうか。第一に本来は原発に依存しない社会が望ましいのですが、原発を頼りにする社会が持たざるを得ない必要悪であるということ。第二に、再処理工場は核兵器の原料であるプルトニウムを作り出してしまうということ。そして第三に、大事故が起きたら原爆、水爆投下と同じようなことが起きてしまうということです。
アメリカのスリーマイル島原子力発電所やチェルノブイリ事故を皆さんは覚えていらっしゃることと思います。茨城県の東海村にあるちいさな規模の、ほとんど故障続きで動いていない再処理工場や、六ヶ所村で本格運転が始まろうとしている再処理工場の事故が起こったら、原爆や水爆投下と同じことで、風下の地域住民は何10万人と死亡すると、国は想定しています。それだけ大変なものなのです。

ですからこれまで、アメリカやドイツは危険すぎて商業用の再処理工場は建設していません。特にドイツは住民の大変な反対運動で計画を中止しています。ドイツは原発そのものも国と電子会社が話し合って、原発を止めることですすんでいます。

マスコミは原発の事実を報道しない

第四に、再処理工場は普通に運転するだけで、日常的に大量の放射能を海や大地に垂れ流します。この、海に放射能を捨てることについて、食べものとの関係を考えてみたいと思います。 
 まず、再処理工場では、どうして放射能が捨てられるのか。

原子力発電所から出た使用済み燃料は、再処理工場に運び込まれます。金属のパイプに入っているのですが、それを裁断して削って溶かすことでウランとプルトニウムになります。その過程で色々な気体性の放射性物質が出ます。それらは大気中へ捨てられます。同時に液体性の放射性物質もたくさん出てきます。そしてそれらは、まとめて海へ捨てられます。

この海洋中への放射能排出が問題なのです。

しかしながら、これまで多くの人たちに知らされませんでした。今から20年ほど前に青森県の県民シンポジウムで、再処理工場と漁業との関係を話しことがあります。すると地元の東奥日報新聞社から原稿依頼がありました。私は原稿に、再処理工場が海に捨てる放射能は、三陸海岸まで流れると書きました。これは青森県だけの問題ではなく、広く大きくもっと遠くまで、隣の三陸海岸まで流れていくものだという意味です。

ところがこれを東奥日報が気に入らなかったのか、原稿依頼をしておきながら掲載を断られました。青森県のマスコミは、県外、特に岩手県が関心をもって動き出すことを恐れたのです。

NHK青森と岩手と秋田の3県の共同制作で、各地の漁業について話をしたことがあるのですが、最後のまとめで、これから東北の海で心配なことの一つが、再処理工場から流れる放射能が三陸の海に流れていくことだ、とほんの少し話しました。すると録画終了後、青森のディレクターがその部分を削除してほしいといいました。

青森県NHKや東奥日報というマスコミが、再処理工場の問題を外に知らせないように、電力会社のためを思ってやっていることです。本当は広く国民に知らせなければならない事実なのに、逆にそれをひた隠しにしてきているのが現実です。

年間約47000人分の致死量の放射能が六ヶ所村で捨てられる

  再処理工場は大量の放射能を海へ捨てますが、それを国は許可しています。国のお墨付きがあることを、再処理工場を運転する日本原燃という会社は、ひたすら隠そうとしてきました。

2005年11月26日の岩手日報に「『本県漁業者 募る不安』環境影響、安全性は…。情報公開を求める声」というタイトルの大きな記事が出ました。その記事で初めて、日本原燃の広報担当部長が、「放射能は薄めて流すから大丈夫だ」と認めました。

原子力発電所が事故で放射能を排出したり、1年間で捨てる放射性廃液を、再処理工場は1日で捨てます。即ち、原発は全国で約54基ありますが、すべての原発が1年間に捨てる量の6倍もの放射性廃棄液を、六ヶ所村再処理工場の1工場で捨てます。

これは大変な量です。日本原燃が国に出している安全審査の申請書に、この数値がはっきりと出ています。原子力発電所も放射能廃液を捨てているのですが、再処理工場はべらぼうに量が多いのです。そしてそれを国が許可しています。

再処理工場では、放流管という管を海の底を何キロも這わせていって、そこから捨てようとしています。薄めて遠くに流し、影響を見えにくくしている。これは工場の煙突と同じですね。廃棄物や有害物がすぐ地元に降ってしまったのでは病気になって問題が起こるので、出す量は減らさないで遠くにとばしてしまおうというわけです。

それに対して、放射性廃棄物や放射性物質を使う医療施設について反対をしていた盛岡の永田文夫さんの試算によると、再処理工場から捨てる放射性量は、仮に廃液がそのまま口から体内に入った場合、年間約47000人分の致死量になります。この恐るべき数字に対して日本原燃は、「廃液は大量の海水で希釈されます。直接飲むことはありえません」と答えています。そんなこと当たり前ですよね。こうやってごまかしているのです。「猛毒ではない」とは言わないのです。

ここでの注目点は、第一に、放流口では、飲むどころかそこの水中にいるだけでも大変危険な量を捨てているということです。飲む以前に、廃液が出てくる海にいただけで大変なことが起きるほどの量なのです。第二に、放射能に汚染された海藻が意味すること。第三に、海中の放射能を私たちは海産物を通して摂取することになること。これらの問題を次に説明します。

再処理工場周辺の子どもの発ガン率は10倍
UK's Sellafield nuclear power plant
イギリスのセラフィールド核燃再処理工場近くでは、放射能汚染した海藻が大量漂着した結果、周辺海岸の25kmを閉鎖しています。再処理工場周辺では、子どもの白血病などの発ガン率は、他の地域の10倍になっています。これは英政府が調査して認めている事実です。恐ろしいことにこのことはマスコミではほとんど、全く報じられません。
 英国議会は、再処理工場からの放射能漏れで魚が大量に汚染されていることについて、セラフィールド再処理工場は世界最大の放射性廃棄物、排出源であり、その結果、アイルランド海は世界で最も放射能の高い海となっていると厳しく批判しています。

放射能廃液を海に捨てたとして、希釈されるから本当に問題ないのかというと、薄まることはあっても消えないし、なくなりません。

放射性物質のなかには、放射能の効力が半分になる半減期が、長いものでは1万数千年もあります。遠くまで流れていくというのはそのとおりだと思いますが、流れた先で海底に降り積もり、消えません。捨てられた放射能は、海の流れにのって拡がっていくことが予測されます。そして海藻や魚に付着し、取り込まれ、濃縮されます。

例えば放射能がプランクトンに付着し、プランクトンを小魚が食べて、小魚を大きな魚が食べて最後は人間が食べます。だんだん体の中に入ってくるにつれて、放射能が濃くなります。これを濃縮といいます。海水中に1あったものが人間に戻ってくるときには100になったり、1000になったりするわけです。

なぜそうなるのか。私たちの血液には鉄分が入っています。採り入れた鉄分が血液などにとりこまれるのは、私たちの体のもともとの仕組みです。

ですから非常に厳しい話ですが、胎児性水俣病は、魚を食べて取り込んだ有機水銀を、母親が体内の赤ん坊へ結果として一生懸命与えていたために、発生しました。体は害のあるものとないものとの区別がつかないわけです。お母さんが、「この子は私の毒を吸い取ってくれたんだ」といっていたのはこのことなんです。濃縮は体の仕組みです。それがあるから私たちは生きていられるのです。原子力発電所の事故で、ヨウ素131という放射性物質が出てきます。チェルノブイリでもスリーマイル島でも、ヨウ素131を空気と一緒に吸い込んで、体内の赤ん坊が死産になる現象が起きています。母親は自分の中の赤ん坊を通して環境と深く関わっています。
1981年11月14日の朝日新聞に、「英の近海物高放射能」という記事が掲載されました。東大で放射線健康管理学を研究している東郷さんという準教授が、日本公衆衛生学会で報告した内容です。

東郷さんは、1978年から、1年半イギリスのロンドンで研究生活をおくっていました。その時に5人の子どもたちを連れて行きました。日本でも家族の放射能を研究者として測っていたので、帰国後測定したところ個人差はあったが、放射線量がいずれも数倍程度上がっていたということです。増えた分は再処理工場から捨てられたセシウム137です。帰国後は数値がどんどん下がり始めました。

東郷さんの子どもたちには魚の好き嫌いがあり、魚好きな子どもほどセシウム137の量が高かったというのです。悲しい話ですよね。「健康に良いから魚を食べなさい」といったら、食べた子どもの体の放射能の量が多かったということです。東郷さんは、「英国近海の魚は日本産に比べ、1000倍以上の放射能を持っています。(中略)放射能汚染が出るとすれば、英国の漁民や、特別に魚好きの人たちからだろうということです。」と書いています。水俣病が不知火海の沿岸で魚を食べていた人たち、漁業の人たちから問題が起こってきたという事実と重なります。

文部科学省の放射線医学研究所ではいま、国民のメニュー調査をしています。モニターが何を何グラム食べたかを細かく調べ、一方、再処理工場の周りの農産物や水産物の放射能量を測ります。そうするとその人が体内に取り込んだ放射能量を計算することができます。1年間の合計量を出し、その合計量が国際基準で決められた数値の下であるから良いということで、再処理工場を運転しようという考え方です。つまり、魚を食べる量が少なければ、放射能をいっぱい海に捨てて良いということになります。

このような調査と前提のもとで原子力発電所依存の社会が成り立っています。これは最も怖いことです。ちなみに、放射能は一番危険な環境問題のはずなのですが、環境省は扱えません。環境アセスメントの中に放射能のことは初めから入っていないのです。

青森で捨てた放射能は首都圏まで流れていく

青森県六ヶ所村の再処理工場で捨てた放射能はどこへ行くのでしょうか。

海流や潮の流れによる拡散状況を調べるために、六ヶ所村沖から1万枚の調査ハガキを流しました。放射能が流れ着く先を調べつつ、再処理工場の危険性を知ってもらいたかったわけです。この経緯は映画『六ヶ所村ラプソディー』にも出てきます。

各地からハガキが帰ってきました。特に地元の六ヶ所村からは109枚。実はさらに同じくらいのハガキの数が地元には漂着しているのですが、送り返していないということが分かっています。地元で大問題になっているなかで「自分のところに放射能が戻ってくる」ことをわざわざハガキで知らせるということは、辛い事ですし、協力するのを知られたくないという複雑な思いがあるわけです。岩手県から2通、宮城県から10通、福島県から3通。茨城県から60通ほど帰ってきました。銚子をこえて房総半島の千倉からも1通だけ帰ってきました。

一昨年は、クラゲの大発生が日本各地で問題になりました。クラゲの漂流する動きが、再処理工場で捨てられた放射能がどのように流れていくかを考えるひとつの参考になります。クラゲは砕かれたり、食べられたり、人間が陸に揚げて捨てたりして消えていくものですが、放射能は消えませんし、時間がたってますます、濃くなっていきます。

運転前から「損害賠償は600億円を用意してあります 」

反対したり、騒ぎすぎると風評被害で売れなくなるということを心配する人もいます。しかし、隠そうが、知らないふりをしようが、いずれ消費者は事実を知ります。

漁業者の中には反対したり、騒ぎすぎると風評被害で売れなくなるということを心配する人もいます。しかし、隠そうが、知らないふりをしようが、いずれ消費者は事実を知ります。魚は、食物連鎖の下のほうの小魚である、イワシやアジ、チリメンジャコなどは汚染が少ないのです。1種類を偏って食べずに満遍なく食べるようにすることです。長生きの漁村の食べ物は、豆と海藻と小魚だと昔から言われています。

政府の原子力防災指針改定素案でいう「再処理施設事故」には、例えば、通常よりも多く放射性廃液を棄ててしまった場合も含まれます。原爆や水爆が投下されなくても、それだけで大変な事故です。政府はそのような場合、食べ物を規制しようとしています。つまり魚を食べるな、ということです。そのようなところに私たちは生かされているのです。

モデルは青森県下北半島の漁業者です。彼は、地元で漁をしていれば、大気から降ってくる放射能や海に棄てられた放射能で身体に放射能を取り込み、海産物を食べて放射能を取り込み、陸での農畜産物を食べて放射能を取り込み、空気、地面から呼吸によって放射能を取り込む、と書いてあります。

年間の合計が国際的に決められた放射能より低いから安全であるとしているのです。取り込む放射能の量を計算されて安全だといわれても困りますよね。これが現実なのです。

2006年2月の朝日新聞に全国紙で初めて、「再処理工場は排水中に放射能を棄てる」という記事が掲載されました。そのなかで日本原燃の社長は、「甚大な影響を与えないようにしていく、万が一の場合は損害賠償をきっちりしていく」と言っています。運転する前からこのようなことを言っているのです。しかも説明会では損害賠償金として「600億円を用意している」と答えています。すでに保険へ入っているのですね。足りない部分は政府に面倒をみてもらうとまで言っています。

次の世代を苦しめないために

英国のセラフィールド再処理工場が運転開始してから40年以上経っています。全国で問題になっているアスベストも使用後やはり40年以上経っています。水俣病事件は50年経っています。同じ年にビキニの水爆実験があって、ミクロネシアの人々は今も放射能に苦しんでいます。ですから、私たちの次の世代が大変なことにならないために、私たちは何を考えるかということになります。

1954年、東京杉並区の「杉の子会」の活動が参考になります。10人くらいの女性の集まりだったのですが、メンバーに魚屋さんのおかみさんがいました。ビキニマグロ事件で魚が全く売れなくなってしまって、どうにかならないだろうかと会に相談を持ちかけたことがきっかけで、原水爆禁止の署名運動が始まり、日本中に広がり、そして世界にも広がっていったのです。その結果、イギリスやアメリカは30年後に実験を中止しました。少数の女性の思いが署名運動となり、世界的な動きを変えていくということにつながりました。

1960年代、すでにイギリスやドイツの研究者はアスベストの危険性を言っていましたが、日本はかまわずどんどん輸入して、学校や色々なところに使ったわけです。そしてようやく昨年製造、輸入中止になりました。
誤った判断やごまかし、無関心が、40 050年後に各地でいかに人々を苦しめるか。再処理工場も然りです。

今ならまだ間に合う─「いのちが大事」

青森県六ヶ所村の再処理工場は、まだ本格運転していません。まだ間に合うのです。今、停めてしまえば、放射能を海に棄てなければ、再処理工場に関しての危険性はなくなるのです。再処理工場反対と言う必要はありません。

「放射能を海に棄てないでください」と言うことです。

これに対して「放射能を海に棄ててもよい」と言える人はいないのです。大事なことは、色々な仕事と暮らしの人々が、それぞれの場で知り、知らせることをやり続けることなのです。10数年前、四国電力が伊方原発の出力調整実験をやろうとしたときに中国、九州、四国の女性が4000人近く集まって、「いのちが大事」と言いました。これに対し、電力会社や政府は何も反論できませんでした。

この運動が、実は一番、原子力発電所反対運動の中で、政府や電力会社が困る運動なのです。それと同じことで、再処理工場では食べものの問題として「放射能を海に棄てないでください」という声をあげることが大事なのです。
みんなが青森県六ヶ所の再処理工場について知って、それをまた知らせるという形で、次々と人々の関心の輪が広がっています。時間がきましたのでこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


水口憲哉「放射能を海に棄てないでください」
─青森県六ヶ所村再処理工場のなにが問題なのか
水口憲哉氏氏(東京海洋大学名誉教授)

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福島第一原発からの放射能放出予測

福島第一原発からの放射能放出予測 (DWD Germany気象庁)

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プロフェッショナルが答える暮らしの放射線FAQ

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魚介類についての影響
野菜や原乳など(野菜、牛乳・乳製品、肉と卵)に関する事柄

* 日常生活で受ける放射線と人体影響

* 水道水の放射能に関するQ&A
* 水道水中の放射能調査結果

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放射線とその影響

急性の放射線影響と放射線量の目安 (ミリシーベルト)





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マイクロシーベルトとは?

国際放射線防護委員会(ICRP)では、一般公衆がこれ以上被ばくしてはいけないという限度として、
「1年間あたり1ミリシーベルト」を勧告しており、日本政府もこの値を採用。

マイクロシーベルトとは、「100万分の1シーベルト」、ミリシーベルトは「1000分の1シーベルト」。

つまり、1,000マイクロシーベルトで、1ミリシーベルト

 
* 原子力基本法

* 原子力災害対策特別措置法施行令