Wednesday

沸騰水型BWRの原発、いわゆるマークIというタイプ。

Fukushima Mark1: GE Whistleblower quit over Design Flaws
経済性を優先するあまりに小型に造ったため、冷却システムなどに余裕がなく、地震や大規模停電になると爆発しやすいという。今回の地震では、まさにその心配が現実になった可能性が高い。



CNNが、米国を代表する原子炉メーカーであるゼネラル・エレクトリック(GE)の元エンジニア、デール・ブライデンボー氏のインタビューを放送した。白髪に白いひげをたくわえたブライデンボー氏は悲痛な表情でこう語った。

「福島原発の事故は私たちが想定したシナリオよりもはるかに悪い。このままだと、何千もの命が失われる可能性がある。それが怖くてたまらない」
遠い米国で、なぜ米国人に福島のことがわかるのか? 実は、ブライデンボー氏は福島第一原発の1~5号機で使われているマーク1型原子炉の原設計をした人物だった。
今回、最初に水素爆発を起こした1号機は日本製ではない。1号機の建造が始まった1960年代、日本はまだ自力で商業用原子炉を造っていなかった。このためGEが造った。このあと2号機はGEと東芝が共同で建設し、3、4号機になってようやく東芝や日立製作所が主体で造った。炉心損傷を起こしている1~3号機はいずれも、GEの設計を基にしたものなのだ。
そしてブライデンボー氏は在職中から、このマーク1の安全性に疑念を抱き、75年に同僚2人とともにGEを退職すると、米原子力規制委員会と共同戦線を張ってマーク1の製造中止を訴えてきた。この3人は、いまでは「GEスリー」と呼ばれている。
前出の番組でブライデンボー氏はこう語っている。
「マーク1は大規模事故に耐えうるようには設計されていません。冷却システムがギリギリの容量で設計されているため、電力供給が途絶えて冷却システムが止まると、爆発を起こす危険性がある。使用済み核燃料の貯蔵プールも最新型のように自然に冷やされるタイプではないため、電気が切れるとすぐに温度が上がってしまう」
福島でも地震で冷却システムが止まり、1、3号機はいずれも格納容器の圧力が高まった。使用済み核燃料の貯蔵プールの温度が上がり、消防車などで必死に水をつぎだした。
まさに氏の指摘どおりだ。一体、このマーク1とはどんな原子炉なのか。
「マーク1が欠陥を抱えているとの米国での指摘は当時から知られていました。格納容器全体の容積が小さいため、炉心部を冷却できなくなって、圧力容器内の蒸気が格納容器に抜けると格納容器がすぐに蒸気でパンパンになってしまう。最悪の場合は格納容器が破裂してしまう心配がありました」
こう説明するのは68年から77年まで日立製作所の関連会社「バブコック日立」に勤務し、福島第一原発4号機の圧力容器などの設計に関わった田中三彦氏だ。圧力抑制プールを含めたマーク1の格納容器の容量は、新型の「マーク3」の4分の1程度しかない。
「今回、津波による電源喪失などで炉心冷却システムがすべて動かなくなったことで、格納容器が破裂しそうになりました。1号機の格納容器が8気圧になったのがそれを物語っています。運転中の格納容器は中の気体が外へ出ないように1気圧よりもすこし低くしており、設計上も約4気圧までしか耐えられないので、ものすごく大変な事態でした」(田中氏)
このため東京電力は、格納容器にある「ガス放出弁」を開けて、容器内の圧力を下げざるを得なくなった。そしてこの弁こそ、ブライデンボー氏が会社人生をかけてまで求めたマーク1の安全対策の一つだった。
「80年代後半、私の訴えの一部が認められ、圧力を逃すガス放出弁を取り付けることが義務づけられました」(ブライデンボー氏)
ガス放出弁がなければ今回、早い段階で格納容器が爆発しただろう。
しかし皮肉にも、このガス放出弁から出た放射性物質を含む蒸気のために、原発周辺の放射線濃度が上がり、作業員らが被曝している。さらに、炉内で発生した水素ガスも蒸気と一緒に出て、1号機と3号機で水素爆発を起こし、建屋を吹き飛ばした。
マーク1の欠点はこれだけではなかった。再び、田中氏が証言する。
「圧力容器に付属する再循環ポンプは、重さが数十トンもあるのに支えが不安定で、大地震時に再循環系の配管が壊れないかがよく問題になってきました。もし壊れると、ここから冷却材が格納容器へ噴き出し、『冷却材喪失事故』という悪夢になってしまうからです」
再循環ポンプは、原子炉内に発生する気泡を取り除くためのもの。最新型では圧力容器内にあるが、福島原発のような古い型では圧力容器の外にある。
「格納容器の圧力の上がり方、水素爆発の起こり方などから推測すると、とくに1、3号機では今回、冷却材喪失事故が起きたように思えます」(田中氏)
国はこれまで、格納容器の欠点にどれだけ向き合ってきたのだろうか? 
「ガス放出弁について当初は『そんなバカな。格納容器は放射性物質が外に漏れないようにするものだ』としばらく検討していました。設置されたのは90年代に入ってからでした」(同)
そもそも、40年以上前に設計された原子炉を今も使っていること自体どうなのか。田中氏は言う。
「日本の原発には法的な寿命がありません。設計者は耐用年数を40年としてきました。1号機は40年を過ぎていますが、日本は米国をまね、90年代に入って最長60年まで使えるとの見解を示しました」
マーク1のコンパクトな設計については、ロシアの専門家は、
「安全性よりも経済性を優先した結果ではないか」
と、指摘している。ブライデンボー氏もCNNのインタビューで、こう話す。
「社員だった当時、上司にマーク1の廃炉を嘆願すると、上司は『そんなことをしたら、わが社の原子炉部門だけでなく、会社自体がなくなってしまう』と聞き入れられなかった」
被災から11日後の22日に、福島原発にはやっと電源が回復し、温度計が復活した。1号機の圧力容器の温度が設計限界の309度を超える400度だったことがわかり、東電はあわてて炉内への注水を増やすことにした。しかし、注水を増やすと、それによって発生する蒸気で圧力容器内の圧力が格納容器に抜けて、再び格納容器が爆発する危険が高まることになる。( by Asahi Weekly)


これは、1996年4月7日、原発の近くにある防災センターで、平井憲夫さんと五〇数名の参加者とが話し合った記録です。「東海地震の震源域のど真ん中にある四基の浜岡原発」 のことを心配する地域の人々と遠くは神戸・名古屋・神奈川・東京などから集まった人々とが話し合いました。浜岡原発五号機増設計画の話が出て、原発の建っている浜岡町佐倉地区で、増設に反対する動きが久しぶりに表面化していた頃でした。

平井


 どうも、みなさん今日は。実は私、ちょっと体調を崩して、昨日まで死んだ人間であって、今日ここへ出てくるいうと、私の掛かりつけの医者に怒られたんですね。というのは、私自身が原発で内部被曝を何回もしている。癌も持っているんです。ですから、ちょっとした熱が出ても、すぐ肺炎を起こして。三日ほど、ちょっと。  
私は二〇年間、原子力発電所を造ってまいりました。現場の監督責任者として。もちろん、この浜岡原発も手掛けております。
 
浜岡と同じ沸騰水型というのが専門なんですが、この浜岡原発の一号機、二号機、いわゆるマークIというタイプ。ましてや一号機については、世界でもまれに見るような大事故を二回も続けて起こしているんですよ。
 
一九八七年、再循環ポンプが、これは沸騰水型の原発では心臓です。これが全部二台ずつあるんです。一台が止まっても一台が動いているからと。ジェット機と一緒でエンジン二台積んで、一つがトラブルを起こしても一つがあるからと。絶対二台止まるようなことはないと。それが浜岡原発ではいっぺんに二台止まってしまったんです。飛行機だったら墜落なんですが、それでも黙って動かしたんですよ、中部電力は。
 
その翌年、また同じことをやってしまう。これはもう、いわゆる世間には顔向けができないくらいの大事故です。私どもが解析していくと、日本くらい大きな事故を度々起こしているとこも、珍しいんですよね。
 
二、三日前ですか、やはり原子力発電所の寿命は三〇年、四〇年といっていたと。そうではない、平均すると一七年くらいになるんだと。というのはアメリカやヨーロッパでは事故が起きる、そうすると国民が黙っていないんです。そんな危ないもの動かしちゃだめだ、というので閉鎖してしまうんです。閉鎖。いわゆる電気を起こさなくなって、そのまんま放射能が出るのがゼロになるのを待って、それから廃炉に向けていくと。
 
これがいわゆる日本では、ない。なぜ、ないのかいうと、やはり国民一人ずつが、危機管理がゼロなんですよね。
お上のいう通り、大企業のいう通りに信用してしまっていると。取り返しがつかないことが起きてしまって、初めて慌ててしまうというようなことが非常に多いんですよね。
 
いわゆる地震。いうのは去年、阪神大地震がありました。地震があった次の日、私はすぐ神戸へ行きました。あの高速道路が引っ繰り返っている。新幹線があんなんになっている。その現場を見てア然としたと同時に、「これは原発と一緒だな」というのを一番最初に感じたんです。
 
なぜかというと、あの橋桁の中から、いわゆる型枠のベニヤ板が出てくる。ジュースの空き缶は出てくる。設計した人はよもやそうゆうふうな物が中へ入っているとは思っていないんですよ。設計する人は。でも私は、「あっ、これが現実だな、原発とまったく同じだな」と。
 
というのは、どういうことかというと、今原子力発電所で働いている人、工事をやっている人たちというのは九五~九八%は、全くの素人の人なんです。職人という人はもうほとんどいない。
 
これはただ、原子力の現場だけではありません。いろんな所で後継者不足、職人不足といわれている。だから実際、そういう人は自分が今何をやっているのか、何の工事をやっているのか分かっていないんですよ。ただ言われているからやっているんだと。
地震が起きた場合、いわゆる原子炉、これは一番みんな問題にするんですね。耐震設計の見直しとか、何とかいっている。私が言うのは、それ以前。原子力発電所の中で人間の体でいう血管ね。これと同じくらいある配管。これが持たないんですよと言うんです。
 
私も、これは非常にみなさんに怒られたんですが、「地震だったら、原発いうのはそんなやわなものではないよ」 というような話をしてたんです。辞めてからも。「地震には絶対自信があるよ、原発というのは」。でも、阪神大地震を見にいって、「こりゃだめだ。こりゃ持たないな」と本当に実感したんですね。「こりゃ、原発というのは、とってもじゃないが地震に耐えられない」と。原子炉そのものは上下や横揺れするかもしれない。でもそれに全部配管がくっついているんです。配管が。これがもう持たない。 
 
日本の科学技術というのは、大したもんじゃないんですよ。でも、今の原発論争そのものが机上の空論、机の上だけの話なんですよ。原発そのものを見たことがないのに、 「原発反対」っていっている学者にしても、「推進だ」といっている学者にしても、じゃ原発の中を自分で手で触って、目で見て、自分が被曝をしながらやったことがあるのか、そういう経験はみんなないんですよ。
 
私も原発反対言っている学者の先生たちをたくさん知っているんですが、私、言うんです。「あんたたち、いい度胸している」と。「見たことがないものを、どのようにして安全だとか危険だといって話が出来るんだ」と。 
 
私が危険だと言うのは、自分が工事をやって、「浜岡原発の一号機、二号機の、いわゆる配管サポートはこういうふうだ」と。自分がやっているから言えることであって。
 
やはり、この浜岡原発いうのは、大きな東海地震が今日か、明日かといわれている。今、一番心配なのが浜岡原発なんです。今すぐにでも運転を止めて閉鎖して、それから何十年と置いて、それから廃炉解体しなくちゃ。このまんまじゃ、今に取り返しのつかないことが起きてしまうと思う。さあ、みなさんどうするか、いうことですね。

原子炉にくっついている配管がもたない


今、あのね。先生のいろいろな説明を聞いていた中で、現場で二〇数年携わってきた実際のお話を聞いて、実はびっくりしたわけです。  
それから聞くところによれば、最近は定検をいままで四か月をね、二か月に短縮していると。そういうことも聞かされておりますがね。今のお話の中で、一号機を受ける時点でね。そういうことは電力会社と国の説明で「九九%は安全ですよ」と。岩盤の上に造ってですね。「マグニチュード八・五の地震がいっても大丈夫ですよ」ということを聞かされておる。
 
それから私も佐対協の委任で、中へ入っていろいろ研修をしました。それで、入るについては放射能ということで何回も衣服を変えて、そして出る時には裸になって、放射能は浴びていないかということを厳重にチェックされているとしたもんですから、ま、電力会社のやることは、これ、大丈夫だなという、今までそういう気持ちでおったわけですがね。
 
実際、現場で携わった人の話、今ここで初めてそういうことを聞かされて、実際、電力会社と国のやり方というものはね、本当にごまかしというか、住民に対して本当に、これは「だまされてた」という感情を深く持っているわけですがね。実際、今日先生の話を聞いて、実は驚いているわけです。

配管が破断したら、もう制御は効かない





 浜岡原発が岩盤の上に建っているから大丈夫かどうかは、私は地震が専門でないので、それは分かりません。 私は原子炉よりも自分の専門の配管が持たないと、これなんですよね。配管がもたない。
 
というのは、日本の自動車が立派だ、立派だいう。ブレーキが立派だ、ブレーキペダルも立派だと。その間のオイルのパイプとか、エアーのパイプがとんだ場合は、いくらブレーキ、原子炉が立派であっても、もう効かないわけなんですよね。
 
特に、この浜岡原発一・二号機というのは、古いんですよね。一号機はもう二〇年、二号機は一七年ですか。この当時のマークIというのは、配管を支えるサポートというのが、いわゆるホールインアンカーといって、ネジでコンクリートに打ちつけているんです。そのために運転しているとガタガタになっているんですよね。効かなくなっちゃっている。だから配管を支えるそのサポートの役目が何にもなされていないんです。
 
一号機、二号機は。あそこへ大きな地震が来て、あれだけの重量の配管がユッサユッサ揺れた場合、これはもう持たないです。ましてや配管が破断をしたら、もう何にも制御は効かないんですよね。制御は効かない。
 
だから私が言うのは、中部電力さんに前にも言ったことがあるんです。素直になんなさいと。私が危険だといっているんだから、じゃ一回入って、どことどこがどうなんだと教えてくれと。で、直そうじゃないかと、そういうふうな姿勢が必要じゃないかと、動かすんなら。それが出来ないんなら動かしちゃあだめですよ言うんです。
 
というのは、私今年に入って、女川原発、これ仙台高等裁判所で今、控訴審が始まっているんですが、これも現場の検証 を私が特別補佐人としてやっているんです。志賀原発も。その時に裁判所で私が「裁判長、ここがこうで危ないんですよ」いう。一つずつ裁判長に説明していっていると、素人の裁判長でも分かるんですよ。
 
だから私が言うのは、女川原発、東北電力にしても、直しなさいというのね。それに反論するんじゃなしに。自分も危険だ思ったら、恰好が悪いだろうがごめんなさい、直しますからと。こういう姿勢がほしいと思うんですよね。

日本の原子力行政は行き当たりばったり





 もう一回お尋ね致しますがね。現在浜岡原発はもちろん、そういうことを聞かされておりますが、よその原発の定検を二か月くらいに、その期間を短縮するかという、その点も、何でそういうことをするかという……。 平井



 これはね、絶対にやっちゃあだめなんですよ、二か月に短縮というのはね。とんでもない話です。どうして短縮しなければならないかというと、まず最初に、全国で原発で働いている人が、毎年毎年少なくなってきているんです。というのは新しい若い人が定検工事ね。被曝をしながら働くという、監督なんかは別としても、作業員として。お歳を召した人が順番で辞めていっているわけで、そうすると、もう人手が足りないんですよ。  
それともう一つは、一九九〇年にICRP、国際放射線防護委員会から、今の日本が守っている年間五〇ミリシーベルト、放射線の浴びる量ね。これは非常に危険だから二〇ミリシーベルトに下げなさいという勧告が出ているわけです。これは日本は守ってないんですよ。いまだにその勧告を受け入れてない。今の半分以下の勧告を受け入れたら、もう定検工事そのものがやれなくなるんですよ。
 
年間五〇ミリシーベルトで管理をしてても、放射線量の高いところだったら、一日に三分から五分しか仕事が出来ない。それが半分以下だと、もう一分か二分しか作業ができない。一分や二分ということは、もう段取りで終わっちゃう。だからもう日本の原発そのものが行き詰まってしまってきているんですよ。
 
というのは、いままでの原子力行政そのものが、もう行き当たりばったりで。何でも都合の悪いことを先送り、先送りにしてきたんですよね。これは住専の問題にしても、HIVの厚生省の対応を見ても、日本政府がやってることは本当に間違いだらけなんですよ。そのツケが何もかにもが、ここで一気に来ている思うんですよね。原子力行政にしても。

主要でない配管は、原発の中には一本もない





 地震が来た時に、配管が破断する話なんですけど。配管にもいろいろあると思うんですけど、外部に放射能が出て、致命的な環境破壊してしまうような配管が破断しても、一番高レベルの放射能っていうのは、外へは漏れないんじゃないかという期待もあるんですけど。
そうじゃなくて、巨大地震が来た時には、予想できないところで配管が破断して、一番困る高レベルの放射能が漏れる可能性もあるんですか、それとも、いったんは炉心の中で食い止められるものなのか、その辺がね、よく分からないんです。
平井



 あのね、炉心っていう言葉がね、私なんかよく判らないんですよ。日本の場合、原子炉。これが圧力容器いうんですよね。その周囲を格納容器いうのが囲んでいるんです。その外に原子炉建屋があるんです。いわゆるダブルで安全性を持たせていると。  
私も設計屋でないんで、どの程度まで安全があるのか分かりませんが、トラブルがあると安全装置、いわゆる安全弁が作動して止まるように出来ているんですよ。どこか一か所でも破断すると、もうそこで運転がさっと止まるというようには設計されているんですが、しかしながら、いわゆる日本型の事故というのが最近多いいうのは、その安全弁ね、いわゆる車でいうとブレーキとかサイドブレーキ、これが衝突する前に効いたのが日本では一件もないんですよ。なんにも効かない。
 
いいですか、日本の原発は優秀だと思い込んでいる人が多いんですよ。私がね、電力会社などとやりあうと、必ず電力会社なんかが言うのは「主要な配管は」というんですよ。私が言うのは「主要でない配管は、あの中には一本もないんだ」、「全部重要なんだよ」と。
 
というのは、そういうバルブを動かす弁ね。それ一つにしても、継走配管っていって、わずか小指ほどのものがあるんですよ。それが一本切れても、あの中のシステムは動かないんですよ。だから私がいうのは、「全部主要な配管なんだよ」ということです。
 
もうこれの一番いい証拠が、五年前の関西電力の美浜原発事故ね。たった二ミリほどの細い配管、蒸気発生器の細管が破断したわけです。これだけでどれだけの事故になりましたか。

いわゆるチェルノブイリの一歩手前だったんですよ。まず最初に安全弁が作動して、いわゆる一時冷却水、放射能をいっぱい含んだ水が行くのが止まるはずなんです。止まらなかった。二発目のサイドブレーキの代わりの安全弁も効かなかった。全部の放射能を含んだお湯を止めようとした主蒸気隔離弁いうのがある。これも止まらなかった。

たった二ミリの配管が破断しただけで制御が効かないんですよ。制御が効かない。ただくっついているだけであって、いままで日本で事故が起きて、そういうものが止まった試しがない。だから、どの配管が切れても一緒です。

「ホールインアンカーは大丈夫なのか」って聞いてください。





 それから阪神淡路の大震災で、中電でも行って来たということで、「あれは、こう大げさに報道されていて、実際は、我々が見てきた所は、そうでもないですよ。特に地震が、八・五のマグニチュードがいっても浜岡原発は大丈夫です」と。
それから国や県が見直しということで、外国の技術者が来たり、日本の技術者が来て、そこらじゅうの原発を見直して歩いて回った訳ね。それでテレビでもいったように、浜岡原発も地震なり、そういったものに対して絶対心配はないということを発表しているでね。それで、どこまで我々は実際にね、信用していいのか。
平井



 今度ね、中部電力とお話するような機会があったら、 「あのサポート留めているホールインアンカーっていうのは、大丈夫なのか」って、これ聞いて見てください。  
すると、「ケミカルアンカーに取り替えた」っていうかもわかんない。「じゃ、何本取り替えたんだ」と。
こりゃ、とてもじゃないが全部取り替えられるような数字じゃない。昔からあるでしょう、コンクリートに釘を打っても効かなくなるというのが。
長老



うんうん。 平井



 それとまったく一緒なんです。その当時は、その方法しかなかったんです。だからそれを悪いいうんじゃないですよ。その後ケミカルアンカーいうのが出たんですよ。これは一本が六千円も七千円もするから。ホールインアンカーというのは何百円なんです。だからね、大分二の足を踏んだんです。それに取り替えるのをね。でも、お金を惜しんじゃだめ、安全のためにはね。 長老



 この間も、ある人と話をしたわけよ。笑い話でね、 「仮に、時期的に夜にでも地震がいけば、原発は心配になるけど、原発が潰れて放射能が漏れる時点になれば、我々の一般の民家はぺっしゃんこになって生きている人はないだろうと」というような、我々もそういう気持ちがしますけれどもね。まー、それは冗談話なんですがね。そうなったら大変ですわね。
 
配管の破断によるとね、十分そういうことは想定が出来るわけですわね。本当に先生のお話を聞いてね、もう一号機、二号機は即刻止めてもらいたいというような……。
平井



 特に一号機、二号機、マークIいうのはね。

放射能は漏れているんじゃない、故意に出しているということ。





 ついでに、もう一つお尋ねしますがね。我々の村は原発の設置をして四号機まで出来ているわけなんです。一号機、二号機、三号機、四号機、まあ併設でね。
その何ていうか排気塔、俗に煙突といっている。それにね、電力会社なりの説明は、「絶対に放射能は濾過機があって、漏れないよ」ということを聞かされておるわけですがね。
平井



今でも、そんなふうに言ってるの? 長老



えっつ! 平井



もう三年くらい前から、言っていないでしょ。 長老



 それがね。設計上も、あれ約百mですか、煙突の高さがね。それで今の原発は海抜九mだから、浜岡はね。それでこっちの方は海抜五〇mくらいでしょ。それで大体一番濃い放射能が漏れているとすれば、一キロ以内は放射能の濃いのが注ぐということも耳にしておりますがね。  
そういった関係で、五〇mのところにおる衆はね。もう一キロじゃなくて、百キロくらいでも放射能を浴びるという感じになるんでしょうかね。そこら辺がね、我々も専門的な事は判らんもんですから。
「漏れないよ」「そうですか」ということで、今までは聞いておったわけですがね。実際問題専門家として、そんなことはどんなふうでしょうか。この際ちょっと。ぜひ、聞きたいと思いまして。
平井



 三年くらい前までは、電力会社も「放射能だしてない」って言ってきたんですよ。でもこれはウソはつけなくなったのね。  四階に行かれたことあります? リアクタービンのある原子炉建屋の四階に? 長老



 えーとッ? 平井



 四階で、原子炉のヘッドを外すところから始まるんですが、定検は。 長老



 そこまでは行っていないんで。 平井



 私、作っていたんですから、放射能を出すために、その装置を。 長老



 今までね、そういったことは、中電から、「排気塔から放射能が漏れてます」なんてことは、一言も聞いたことはないんです。 平井



 あのね、漏れているんじゃないんです。能登へよく行くお寺があるんです。そこの小学校五年の女の子が、ある日学校から帰ってきて、「おじちゃん、友達がね、原発は放射能が漏れているんだって。あれ、漏れているの」っていうから、「あれ、漏れているんじゃないよ。あれ、出しているんだよ」。 会場



アハハハハッツ。 平井



 しばらく考えてからね、「ああ、出してるんと、漏れているんと、おじちゃん、違うよね」って言うから、 「そうだよね」って。  そういうことです。故意に出しているということです。

毎日蓄積する放射能で、最初にやられるのが小さい子どもです。





 ただ、定検の時にね。分解したのを見たことはあります。それで「こうこうこういう訳だから、放射能は今ロボットで入れ替える」と、「だから絶対に人体に影響はありませんよ」と聞かされておるわけですがね。 平井



 それなんです。数値ね。その時の数値としては、人体に影響があるんかないんか知りませんよ。でも、出ていることは確かなんです。出ているより、出していることは。 長老



うんうん。 平井



 でも、私が常に言うのは、それがね、蓄積されるんです。五年、一〇年、二〇年。毎日、人間の体が朝を迎えればゼロになっているんではないんです放射能が。そこへ住んでいる人は、毎日それが蓄積されるわけなんですよね。  
だから私が言うのは、今の大人はいいよと。だけどいわゆる一番最初にやられるのが小さい子供の甲状腺なんです。だから今の小さい子供をとにかく監視しとかなきゃ。ゼロじゃないんですよ。出しているんだから。
 
微量というような言葉を使いますが、微量でも自然界にあっちゃないもんだから。これをゼロにするいうことは出来ないんですよね。これがなぜ、日本はそういう言葉で一生懸命逃げようとするんか。
 
アメリカのショーラム原発っていうのは、一〇〇キロ離れたところの住民のね、この人たちの健康を害すと、原発というのは。だから運転しちゃならないと。試運転までしてたのに閉鎖しちゃったんですよ。
 
私が中心でやっている原発被曝労働者救済センターに、もう二、三年前から、全国各地のいわゆる周辺住民の人たちの健康調査もいっしょにやってくれないかいう声が上がっているんですが、よその国では、周辺に住んでいる人たちの健康影響調査いうのを国でずーっとやっているんですよ。日本はそれを一生懸命隠そうとしているよね、今も。
 
そうじゃない。やはり影響があるならあるんで調査をやらないと、大変な問題が起きてしまうんですよね。その時じゃ遅いんですよ。

「交通信号みたいに、放射能に色がついていたら一目で分かるけど」





 それとね、中電は浜岡の周辺には十幾つか、まー、詳しいことは分かりませんが、モニタリングとかありますが、一般の衆はね、こう外から見ても、何にも分からないんですがね。三か月に一回ですか、住民に「大丈夫ですよ。被曝はありませんよ」ということを中電が言うんで、今までずーっと、これを信用して。  
「いろいろと被害はありませんよ」ということだけど、そういうものを一般の衆はどこで信用するかっていうことを、ちょっと疑問に思って。
 
この間も、ある人と話していたんですが、ああいうものが交通信号みたいに、「これは放射能がありゃ、きちっと橙色になる」とか、「青なら大丈夫です」とか、そういうことならばね、一目見ても分かるけど、「ぜんぜん大丈夫です」と。信用するしかないんで。
平井



 浜岡もそうだったんですがね。原発を運転する前にも計っているんですよ。そうすると、運転を始めるでしょう。自然界の放射能が少なくなったという報告があるんです。そんな馬鹿な話はないんですよ。  
いうのはどういうことかというと、今いうようにモニタリングポスト、それからモニタリング・ステーションというのが原発から半径八・圏内にあります。それから電力会社の敷地内にも。
 
問題は、私も現場にいるときに研究したんです。「なぜ、これが反応しねえのかなー」って。他の測定器ではボンボン反応するんです。そこにちょうどメーカーが来ていたんです。「おい、この測定器ではこれで上がってんだが、なぜこれでは上がらないんだ」「そんなところから上がってもらったら、とんでもない数字が出てしまうんですよ。だから例えば、一なら一になるのは、通常の測定器よりももっと高くならないと一にいかないんですよ。だからいつまで経ってもゼロなんです」と。
 
そういうふうな測定器にしているんです。

地元の人が「事故が起きたら直ぐに知らせろー」って言うことね。





 巨大地震が来て、最悪のケースの場合には、かなり短時間に異常な放射能が外部に漏れる危険性も持っていると。格納容器、建屋の外へ出てくる可能性があるんですか。場合によってはあると。 平井



 ありますよ。それは場合によってではなく、十分過ぎるくらいありますよ。だから私がいつも言うのは、事故が起きて、直ぐ知らしてもらうということね、原子爆弾じゃないんだから、まだいくらか逃げる余裕があるんですよ、遠くへね。距離を置けーって、私なんかいつも指導していた。だから、事故が起きたら一秒でも、一分でも、一〇分でも早く知らせてもらういうことね。  
悲しいけど日本の電力会社にはその気がないから、事故が起きてやはり一時間、二時間、三時間、四時間も経ってから知らされると。
 
これは、地元の人がやはり、事故が起きた時には直ぐ知らせろーということをね、もう声を大にして言うことですよね。これ以外にないんですよ。

「不利になるような事は絶対隠いておったんだね」





 まず浜岡原発の一号機のね、トラブルの時に循環ポンプが止まったというね。我々地元でそういうトラブルがあった時に、中電から話があって、いろいろ説明を聞いたわけですがね。  
さっきのお話の中では、二ついっぺんに止まったということなんですがね。その説明の中では「一つ止まったで、もう一つ予備があるで、別に異常はなかった」と、「それをまた修理する」って、そういう話の中で「トラブルがある」っていうことばかり電力会社は言っているもんで、我々地元の衆も、それなりに、「そうか、そうか」っていうような気持ちで、今日に来ているわけですがね。
 
この間もボヤの問題がね、新聞に出た訳だけれど。あれも幾日も経ってですか、黙ってごまかしていようと思ったのが、自然とばれて……。
平井



 一九八七年八月二八日、午後七時一〇分。時間まで出ているからね、二台とも止まったって。 長老



 うーん。そのことはね。地元の衆に、中電と佐対協との我々の説明の中では、不利になるような事は絶対隠いておったんだね。

そんな馬鹿な防災計画がありますか





 浜岡町では毎年「ダイアリー」をくれるんです。各家庭に。その上に「原子力について、いろいろ安全だよ」 ということが書いてあるし、「もし、事故になって放射能が漏れた場合に、こういう方法で逃げなさい」ということで、とにかく、この防災センターに集まるまでが書いてあるんです。だけど一番肝心なことは、何時漏れたかということです。  
この前、中電さんが来たときに、聞いたんですが、「事故は絶対にない」と。「でも、そうなった場合、どうすればいいかということをやっぱり町民に徹底しておいて貰わないと、みんな不安でしょうがないし。四号機までは、みんな心の中ではいやだと思っていたけど、口に出していう勇気が無くて言えなかったんだ」と中電さんに言ったら、 「防災については、県が責任を持っているから、県の方に言ってください」と言うことだったんです。
 
私が一番知りたいことは、どの時点で「避難しなさい」 ということを町なり県なりが言うのかどうか。
 
阪神の地震の時には放射能がないから、みんなが手伝いに来てくれたと思うんですけど、おそらく原発が壊れたら、手伝ったり助けてくれる人は望めないと思うんですよね。そうした場合に、さっき「みんな家も潰れちゃうから、死んじゃう」と言ったけども、そんなことは考えられないと思うんです。もっと真剣にね、そういう場合、どういうふうに対応したらいいかということを、やはり県が責任を持っているのなら、そちらの方に聞かなきゃいけないなーと思っているんですが、どの時点で被害があるよということを教えてくれるのか、ちょっと教えていただきたいなーと。
平井



 私が思うのはね、仮にチェルノブイリクラスの事故が起きた時、これはもう起きるんですから、必ず、今のまんまでは。もう今日かもわかんない。明日かもわかんない。でも日本の電力会社じゃ、よう発表しない、怖がって。だからそれは無理なのね。   
今いうように、「県に聞いてくれ」「国に聞いてくれ」 と、防災は。というのは国にしても、それじゃ浜岡町の桜が池のあの辺の人の家がどこにあるのか知りませんよ。そんなもん。ただ机の上で書いているだけでしょ。それをまた県がそっくりそのまんま採用しているんです。それで、各市町村がまったくそれと同じものをやっているんです。だから何にも役に立たない。机の上だけの防災計画っていうのを作っているんです。これは根本が間違いなんです。根本が。
 
今言うように、どの時点で避難すればいいかというと、もうこの辺から間違いというのは、日本の場合は、原発事故重点地域というのがあるんです。重点地域。これは原発から半径八キロ圏内で、九キロの人の所へは影響がないといっている。分かる?
住民



 分かります。 平井



 そんな馬鹿なこと、いまだにいっている。いいですか、日本の場合は一ミリシーベルト浴びて、初めて大人も子どももコンクリートの建屋の中へ逃げなさいよ、というようになっているんです。子どもは大人よりも何倍も影響があるんですよ。でも日本の場合、そこになるまで子どももじーっと浴び続けるわけ。そんな馬鹿な防災がありますか。これは変えられるんですよ。変えられるの。  
いわゆる日本で本当に原発の事故が起きた場合に、だれが対応できるのか。今、核戦争を想定した訓練を受けている自衛隊員が六〇人だけなんですよ。それ以外に原発事故に対しての対応が出来る人はいません。
 
やはり一番問題なのは、そうはいっても消防は知らんふりできるかいうのね。できないと思うのね。
 
私も石川県の羽咋市というとこ、ここで市長さんに呼ばれて、消防署の人に防災の話をしてくれということでお話をしました。全国の消防署の人いうのは東海村へ訓練に行っているんです。訓練した人に話聞いたけど、「何が何だか分からなかった」って。一週間では。「自分たちはどうしたらいいかなー」っていうから、「あんたたちも子どもや奥さんがいるなら、事故が起きたら最初に逃げなさい」 と言うの。知識がないんだから。消防署の人はね、まだそれなりに知識があるんです。
 
私が一番怖いのはね。消防団。この人たちは原子力の知識も何にもないんよ。でも、何か大きな事故、災害が起きると一番に行くでしょ。何にも知識がないまんま。これが非常に怖いんですよね。
 
だから国が悪い、県が悪いじゃないの、自分たちで新しく防災計画というのを作るわけ。それを国なり、県なりに採用させるんです。お前が悪い、県が悪いいうんじゃなしに、分からないんだから、あの人たちは。

だから一緒に勉強しようよとやっていけば、この防災計画もきちんとしたものが一つずつ出来上がるんですよね。放射能が行くのは八キロまでで、八・一キロの所は影響がないというようなことをいわせてたんじゃ、だめ。
住民



 その防災計画のことで、私、県に要望書を出しましたが、その返事が来て、一四〇人だか動員して構内で避難訓練を二年から三年に一回ずつやりますと。それ以上のことはまた地元の方々と相談してやりますということですけど、結果的にはやる気がないっていう雰囲気ですね、返事が。それを持って、去年の一〇月の三〇日に、科学技術庁へ折衝に行った時も、科学技術庁でもやはり防災計画ちゅうのは、改めて具体的なものはないような返事だったです。

国民が声を出さなきゃ、ダメ。





 うん。だからやっとこさね、国土庁も今までは原発事故は起きないって言っていたけど、こう度々事故が起きだしたので、やっと防災に手を掛けだしたんです。  
でも悲しいかな、これ、まったく素人ばっかしでね。ろくなもん出来やしないと思うけど。
 
だから、日本の原発がさっき私がお話したように、チェルノブイリくらいの事故がもうすぐ近く起きますよいうのは、そのために、今事故が起きたら放射能がどっち向いているか、すぐ調べなきゃだめなんですよね。そのためのヘリコプター、これは三年前からスピディーいう機械積んだのを置いているんです。すぐ飛び立つように。
 
でも、私がいうのは、わざわざ中央からきて判断してやるから、ちょっと待っとれ。お上が判断してやると、それから逃げるか、逃げないか決めると。こんな馬鹿な話があるかいうんですよ。だから国民が声を出さなきゃダメ。黙ってちゃダメなの。

原発が安全だっら、ヨウ素剤を置くなー





 それに付随して、ヨウ素剤の配付というようなことを聞いたんですが、科学技術庁の返事ではあまりはっきりしたものはなかったです。それで相良町の役場へ聞いたところ、二八万五千錠確保してあると。恐らくその勘定からすると、浜岡町では五〇万錠くらいは役場の倉庫にあると思うのですけど。それを公表しろと言うのですけれど、区長にも町会議員にもぜんぜんその所在を明かさないんです。  
「なぜ、明かさないか」と言ったら、「県から指示がこないから明かさない」と。「いったん、何かあった時に困るじゃないか」と言ったら、「いや、県の係官が現場へとんできて指導する」と。総務課の係長がいうのだから間違いないです。
 
たまたま昨日、NHKテレビで、朝の七時のニュースで言いましたけど、それの飲み方の説明書を外国人にも分かるように各町村へ配付しますと。でも、相良町の役場ではそういう発表すらない。一般の方は役場にあることも知らない。
平井



 それが問題なんですよ。私がいつも言うのは、原発が安全だというんだったら、ヨウ素剤を置くなー言うんですよ。ヨウ素剤を置くいうことは、事故が起きるから置いているんだから。
日本は置いてあるんだけど隠すんですね。それを渡すとパニックが起きるからって。パニックが起きるわけはないんですよ。これは原発が稼働している自治体なんかはみんなヨウ素剤を置いとります。でも、今いうように、一生懸命隠して置いとるのね。事故が起きた時に、だれがそこまで取りに行くんだという。だからそういうところも見直しをやらなきゃダメなんですよね。
住民



 結局、地域の方が要求する以外に、変えて行く方法はないですね。地元の役場に行って、どうだと言っていけば、返事をせざるを得ないけど、向こうからは知らせちゃくれない、こういうことです。 平井



 だからまず最初に、この浜岡役場の議会でそれをやるということですね。議会が全部条例を作って公表して、どこに置くか、個人の家庭に置くか、その辺からやっていかないと。
日本の場合は、中央省庁というのは縄張り意識がひどいでしょう。原発の防災について、国土庁がある程度握っているんですよ。だから科学技術庁はオレは知らねーよと言ってみたり。
○住民



 知らないって!



長年、中部電力や国を信じきって原発推進に協力してきた佐対協(さたいきょう=佐倉原発対策協議会)の三人の長老が、ひどい咳で何度も話を中断した平井さんの目の前に座ってじっくりと話を聞いていました。平井さんはこの八か月後に亡くなりました。
一九九八年六月四日に行われた浜岡原発五号機の第二次公開ヒアリングで、住民の「東海地震で原発震災が起きないか」の質問に、通産省は「原発震災が発生することはない」と説明しましたが、武谷三男さんのいわれるようにその科学的な根拠はないのです。通産省が許可した五号機は、一九九九年三月から工事が始まっています。二〇〇〇年二月二二日、中部電力は三重県知事の芦浜原発白紙撤回を受け入れましたが、早々に「浜岡原発増設も選択肢の一つ」と表明しました。   


 かつて日立製作所で原子力発電の設計をしていた大前研一氏が、日本の原発設計の盲点を指摘。


福島第一原子力発電所の事故で東京電力の対応が後手後手に回った原因の1つは、同原発の原子炉を設計したのが日本企業ではなく、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)だったことである。
1号機と2号機はGEが設計・製造から据え付け・組み立て・試運転指導・保証責任まですべてを請け負い、キーを回しさえすれば設備が稼働する状態で引き渡した「フルターンキー」、3号機と4号機は東芝と日立製作所がそれぞれGEの設計に基づいて“国産化”した(GEからライセンス供与を受け、若干の修正を加えて製造した)、いずれも「マークⅠ」と呼ばれるBWR(沸騰水型原子炉)だ。

福島第一原発に限らず、当初の日本の原子炉は、フランスやイギリス、カナダ、ロシアのように独自の炉を開発するのではなく、アメリカのGEとWH(ウエスチングハウス)が開発した原子炉をそっくりそのまま導入するか、設計図をもらって見よう見まねで造ったものなのである。
とくに東電は、GEを崇め奉っていた。私が日立製作所の原子炉エンジニアだった当時、新しい分野だった高速増殖炉で独自に考えた設計図を持っていくと、それには見向きもせずに、GEのお墨がない原子炉など要らない、と門前払いを食らった。

日立が技術提携しているGEの設計のままでなければ、東電は一顧だにしなかったのだ。私がわずか2年で日立を辞めた理由の1つがそこにある。せっかく日本独自の原子炉を造るために必死で勉強したのに、結局、GEの技術指導を強いられたのでは、原子炉を設計している意味がないからだ。
  
要するに東電(そして当時の動力炉・核燃料開発事業団)は、自分たちで創意工夫する原子炉の建設を放棄していたのである。

東電のオペレーターは、ひたすらGEのマニュアルを勉強して覚えるだけ。自分の頭で考えることがない。だが、アメリカと日本は事情が違う。日本ではGEの設計者が経験したことのない大地震、想定していない大津波が起きる。ここに「フルターンキー」と「名ばかり国産化」の大きな盲点があった。

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