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リクビダートル

彼らの多くは、事故発生から数年以内に放射線白内障を発症した。世界保健機関(WHO)によると、リクビダートルの疾患調査から、従来の予測よりはるかに低い放射線量でも白内障が発症する可能性が明らかになっている。

影響は現場で被曝した作業員以外にも広がった。当事国のウクライナや隣接するベラルーシロシアに住んでいた子どもや若者は、爆発で飛散した高レベルの放射性ヨウ素が混入した牛乳を知らずに飲んでしまった。このグループからは、2005年までに6000例を超える甲状腺癌(がん)が確認されている。

WHOや国際原子力機関(IAEA)を始め他の国連機関が世界中から召集した専門家チームは、被曝の長期的影響による死者は4000人と見積もっている。しかし、環境保護団体グリーンピースは少なすぎると見ており、10万人に達する可能性を主張している。
ヘリコプターでチェルノブイリ原子力発電所の冷却水貯水池に向かうリクビダートル(後始末する人)。





原発事故の9カ月後、事故処理の任務を終えたリクビダートルが医師の診察を受けている。被曝治療を専門とするモスクワの病院
複数の国際的研究によると、チェルノブイリの放射線に被曝した作業員達は、不安症状を平均より2倍強く感じていた。原因不明の身体症状や体調の悪化を訴えるケースも多かったという。

数年前には、低い障害者給付金に抗議してハンガーストライキを決行した者もいた。彼らの多くが、慢性頭痛や心臓病、高血圧などの健康問題に苦しんでいる。

  25年前のチェルノブイリにも、事故と戦う作業員たちがいた。4月26日に25周年を迎えたチェルノブイリ原発事故では、現在のウクライナ、ベラルーシ、ロシア西部に大量の放射性物質が降り注いだ。クリーンアップ作業には、発電所従業員、消防士、兵士、鉱山労働者、建設作業員、ボランティアらが多数従事した。



チェルノブイリ原子力発電所の事故処理のために召集されたリクビダートルたち。放射線量が高い原子炉建屋の屋根部分の除染作業を担当した
25周年を翌日に控えた4月25日、元リクビダートルたちはモスクワでメドベージェフ大統領から勲章を授与された。しかしメディアは、過酷な任務の爪跡にいまだ苦しむ現実を伝えている。作業員のウラジーミル・コンドラショフ(Vladimir Kondrashov)氏はAFP通信に対し、「当初は自分が英雄になったような気もしたが、高揚感はすぐに冷めた。今は月収わずか2万3000ルーブル(約6万8000円)の生活だ」と語っている。当初は国から多額の医療補償金が出たが、後に減額されていた。

国際原子力機関(IAEA)によると数多くの研究は、作業員たちの放射線被曝と高い発ガン率・死亡率との間に直接的な因果関係を認めていない。しかし、心的外傷後ストレス障害の症状は確実に現れているという。

「みなさんの家族や奥さんにすまないと思う。ああ…、もう言葉にできません。本当にありがとうございました」。東京ハイパーレスキュー隊員からの活動報告を受けた石原慎太郎は、涙を隠さず、深々と礼をした。
米国エネルギー省のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は、独自に開発した「蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)」で作業員たちを検査した。リンパ球内で誤った再結合を起こす相互転座(染色体の一部が入れ替わること)の数を検出し、染色体異常を測定する技術だ。被曝の影響は明らかで、老化の進行が約10年早まっており、喫煙を同じ年月続けた場合と同程度の異常だった。

同研究所によると、被曝による健康面へのダメージは小さいとみられている。しかし、各個人の健康リスクは特定できないという。被曝量が作業内容によって異なり、喫煙や飲酒、食事など生活習慣も影響するからだ。健康被害とチェルノブイリ原発事故との関連性解明は、年々難しくなっている。(by National Geographic.)




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